倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

「いのち」とつながる喜び

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丸山敏秋著
講談社/定価¥1,500(税別)
B6判 244頁
ISBN978-4-06-213977-9

 

本書は「お産」がテーマです。
といってもお産や子育てのハウツーを伝えるのではなく、
お産や育児の「あり方」について、しっかり考えるのが狙いです。

 

 戦後の日本は大きく変わりました。プラスの面だけでなく、奪われたり失ってしまったりしたマイナスの面が少なくありません。その筆頭が、「自然」ではないでしょうか。

〔中略〕

 お産のあり方も大きく変わりました。ほとんどの子供が病院で生まれるようになりました。お産という窓口から覗くだけでも、戦後の社会のいろいろな矛盾や問題点が見えてきます。
 八十年代に入ると、できるだけ自然なお産、自然分娩を求める声が上がり始めます。その傾向は、今日さらにつよくなっているといえましょう。
 これまでのお産のあり方の、どこにどんな問題点があるのかも、この本で改めて指摘してみたいと思います。そして、自然なお産とはどういうものかを考えてみたいのです。(「はじめに」より)


 

自然分娩を望む声が高まる一方、
どうしても自然なお産というと、
その「やり方」に意識が向かいがちです。
しかし、「あり方」を先行させるのが本来望ましいと著者は訴えます。
特に現代人が忘れがちなのが「いのち」とのつながりだと言います。

 

 自然から遠ざかると、「いのち」とのつながりが薄れてきます。都市という檻の中に囲まれた私たちは、自然のリズムに反するような生活を強いられるようになりました。数々の享楽は得られても、心はひ弱になり、生活習慣病も蔓延してきます。家族の間ですら絆というつながりの感覚が薄らぎ、みんながバラバラになる孤立の不安が高まっています。
 すでに子供たちや若者たちが、さまざまな形で危険信号を発しているではありませんか。このままさらに「いのち」から離れていけば、未来は暗澹たるものになってしまいます。

〔中略〕

 そこで注目したいのが、お産のあり方なのです。お産をほど「いのち」と結びついた営みはありません。産婦はもちろん、その夫や家族にとっても、「いのち」とつながる絶好の機会がお産です。(第四章「喜びに満ちたお産」より)

 

母と子の間に存在する「いのち」のつながりや、
その絆の深さを認識することが、
自然なお産への第一歩であり、
妊娠前後の時期から母子が「いのち」のつながりを深め、
確かな絆を育むことで、
喜びに満ちたお産、
苦痛のない安らかなお産の扉が開かれます。

本書は、病院出産や自然分娩の現状や、
「胎内記憶」と呼ばれる「誕生前からの記憶」を持つ子供たちの事例、
ソニーの創業者・井深大が企図した胎児教育や幼児教育、
「無痛安産」の体験談や母子の絆にまつわる研究報告などを紐解きながら、
お産や育児のあり方を真剣に見つめ直し、
“「いのち」とつながるお産”の意義や日常の心構えについてお伝えします。

 

《目次より》

はじめに
第1章 母子一気の世界
第2章 胎児は見ている、覚えている
第3章 もっと自然なお産へ
第4章 喜びに満ちたお産
第5章 「いのち」とつながって生きる
第6章 誕生前から始める子育て
おわりに

 

 ※(2017.2.20)現在、本書は販売しておりません。

「心を探る」生き方リサーチ③ いのちの扉の向こう側

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倫理研究所
倫理研究所/定価 ¥500(税込)
B6判変形 64頁

 

「心を探る」生き方リサーチの今回のテーマは、
現代社会における死者と生者の距離」です。
20歳から69歳の男女4,499名を対象に、
〈人の死〉の経験や死別した人を偲ぶ方法などを調査し、
そのデータをもとに日本人の〈死生観〉について考察しています。

例えば、亡き父母を偲ぶ方法については、次のような結果が出ています。

 

故人を偲ぶために
特別に何かは行なっていない ・・・ 男性 14.5%/女性 9.9%

たまにだが、
時間があればお参りをする  ・・・ 男性 21.0%/女性 32.9%

毎日欠かさず
お参り・仏壇を拝むなどする ・・・ 男性 16.3%/女性 14.3%

定期的にお参りする     ・・・ 男性 42.2%/女性 39.1%

命日などに
一人でその故人を偲ぶ    ・・・ 男性 29.0%/女性 41.7%

命日などに、家族や友人・関係者などと
その故人を偲ぶ       ・・・ 男性 15.0%/女性 35.0%

故人の写真を身近に置いている・・・ 男性 5.1%/女性 5.0%

陰膳などをしている     ・・・ 男性 10.1%/女性 8.2%

 

〈命日〉〈墓参〉といった「何かのきっかけで亡き父母を思い出して偲ぶ」ことが男性の特徴であり、「特にきっかけがなくとも頻繁に亡き父母を思い出して偲ぶ」傾向を持つのが女性の特徴です。

そして、男女ともに約4割の人が、
定期的に墓参を行ない、故人を偲んでいることが分かりました。

 

また、「目に見えないものを信じる」ことについては次のような結果が出ました。

 

死後の世界や霊魂は
存在していると思う。  ・・・ 男性 31.1%/女性 45.9%

「生まれ変わりや輪廻ということはある」という

感覚を持っている。   ・・・ 男性 30.7%/女性 46.1%

人智を超えた力の存在や働きがある」という

感覚を持っている。   ・・・ 男性 45.2%/女性 56.8%

「お天道様が見ている」というような

感覚を持っている。   ・・・ 男性 37.9%/女性 53.2%

目に見えるものだけが
すべてではない。    ・・・ 男性 78.6%/女性 88.0%

 

死者の肉体はこの世に存在しなくても、
「目に見えない存在」として、
身近に「いる」と感じているのは男性より女性の方が高い傾向にあります。

興味深いのは、男性の約8割、女性は9割近い人が、
「目に見えるものだけがすべてではない」と答えていること。

その他、本書に掲載された多くのデータを紐解くと、
他者や自分の〈死〉を見つめることで、
〈目に見えないもの〉や連綿とした〈いのちのつながり〉に触れることができると考えている人が多くを占めていることが分かってきます。

都市化の傾向を強める現代日本においては、
〈死者〉の存在感が希薄化しているのではないか、
かつて日本人が抱いていた死者と生者が「つながっている」という感覚は薄らいでしまったのではないかとの仮説を立てて臨んだ今回のリサーチでしたが、
かつてほど濃密ではなくても、
依然として〈死者〉とのつながりを大切にし、
〈死者〉に畏敬の念を持ちながら暮らしている日本人の姿が見えてきました。

死者を思ううえで大切なことは何か、
死に向き合うことの意味とは何か、
故人と「つながる」ことの意味とは、そして効果とは。
客観的な数値をベースにさまざまな角度から考察しています。
ぜひ、ご一読ください。

 

《目次》

プロローグ
死者とともにある日本人

データから見た日本人の死生観
男女で異なる死生観

個性化してきた人生の締めくくり方
目に見えないものの重要性
死者はこころの支えになりうるか
死者が教えてくれること

父母との別れ
父母を偲ぶ方法

男女で異なる父母への思慕
生前と死後では絆は変わるか

コラム
故人とつながることの意味と効果

昔の日本人の死生観

体験記録
癌が教えてくれた亡き父母の愛

死に対する考え方・価値観
データから見えた全体の傾向とは?
死に向き合うことの意味

コラム
都市化と死者

死者を思ううえで、大切なことは何か
学びあう魂

エピローグ
生と死はつながっている

 

倫理研究所ホームページ内

倫理の本棚(オンラインストア)」で販売しています。

『永遠の輝き』(上・下) 丸山敏雄名言集

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倫理研究所
新世書房/定価各¥1,000(税込)
新書判上製256頁

 

倫理研究所創立者・丸山敏雄は、
59年の生涯で数多くの著述および講演活動を行ないました。
特に最晩年は衰えた身体に鞭打ちながら、
敗戦後の鬱屈した世に生きる日本人に対して、
苦難救済の「道」として、純粋倫理の真義を示すべく、
著述に大半の精力を注ぎました。

 

 これまでの倫理は、時勢により国により、いろいろのちがいがあった。しかし、ここに生活法則としての実験倫理は、常に不変である。〔中略〕これはちょうど、如何なる宗教も科学も否定することが出来ぬように、電燈が出来ればこれをつけ、ラジオが出来れば放送するようなものである。僧侶といえども、牧師といえども、夫婦の道・親子の道は、この倫理を外にしては正しきを得ないことを断言する。(上巻「純粋倫理の発見」より)

 苦しみを喜んで迎え、病気になれば「おめでとう」という時代が来た。それは、苦難は幸福の門であり、万人が必ず幸福になれる絶対倫理が現われたからである。

 それは、宗教でも、主義でも、学説でもない。実行によって直ちに正しさが証明できる生活の法則(すじみち)である。(「純粋倫理の発見」より)

 苦難(くるしみ)は人を苦しめるためでも、殺すためでもない。正しく生かし、ほんとうの幸福の道にたちかえらせるためのむちであり、照明(あかし)であるのです。恐るべき何物もなく、いやがらねばならぬ何物もありません。今や病気を歓迎し、苦しみを謳歌(たたえ)る時代がきました。何とすばらしいことではありませんか。(「苦難福門」より)

 

本書は、丸山敏雄の膨大な遺稿の中から、
純粋倫理の核となる言葉をセレクトしたものです。
上巻では原理・原則についての著述から、
下巻は日常生活の実践的な内容や、
短歌および書道芸術の心得などから選んでいます。

 

 今日一日が私の一生だ、今日は二度とこない、やり直しはできぬ、と気がついたら、朝寝坊などできたはなしではありません。立ちおくれたら、もう負けだと見てよい。「新しい倫理」の実践は、早起きから始まります。国家の再建もまず早起きからです。

 事を為そうとする者は、太陽をして、己の寝床をうかがわしめてはなりません。まず一仕事片付けて、ゆうゆうと日の出を迎えるように致しましょう(下巻「日常の心得」より)

 苦難のないところに、ほんとうの芸術は生まれない。

 

 艱難こそは、芸術家の師である。病魔よ、来い。これがわれらが友である。貧も苦も深ければ深いほど、われらに幸いするもの。何でも来い、なに、へたばるものか。

 

 一身に重畳する苦難の多ければますます勇み、強ければいよいよ努め、いっさいを美の絶対境に転じ、大自然を直ちに芸術とし、生活そのままを芸術と客観する大不動心に突っ立つ。

 ここに偉大な芸術が生まれる。(下巻「芸術―生活浄化の途」より)

 

丸山敏雄の言葉は常に明るく前向きであり、
今なお、あたたかな輝きを放ち続けています。

 

 「希望は心の太陽である。」日が昇れば、夜があける。いつも心に希望を持ち、太陽のように明るい心を高く掲げて堂々と進む人の前途には、決して不幸は来ない。

 悲観は、雲である。憂いは、霧である。さわやかな希望の薫風(かぜ)で吹き払おう。燈火をあかるくしよう、そして高く掲げよう。燈を太くしただけ、高くかかげただけ、必ず前途は打ち開ける。(上巻「純粋倫理の内容Ⅲ」より)

 

 

《目次より》

上巻
(一)純粋倫理の特色
(二)純粋倫理の原理
(三)純粋倫理の内容Ⅰ
(四)純粋倫理の内容Ⅱ
(五)実践の基本

下巻
(一)日常の心得
(二)家庭生活の基盤
(三)働きと職業
(四)青年へ
(五)芸術―生活浄化の途

 

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