倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

悲嘆からの贈りもの―最愛の肉親の死を乗り越えて

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倫理版グリーフワーク研究チーム編著
新世書房/定価¥700(税込)
B6判 144頁

 

 「人間は生まれたときから死に向かって歩き、そして死は人の定め」であります。理屈ではわかっていても、その死が最愛の肉親のものであれば、遺された家族は事実をきちんと受け止められないまま、ただ悲しくて、淋しくて、苦しい思いをどこへぶつけていいかもわからずさまよい、果ては自分を責め、その後の人生を狂わせてしまうこともあるでしょう。
 死を見つめるという行為は突き詰めると、いかに生きるかを学ぶことであります。(「はじめに」より)

 

肉親との決別は、誰もが経験する通り道です。
しかし、遺族がその死を受け止め、悲嘆を癒し、
心の整理を終えるまでには相応の時間を要します。

そのような遺族の社会復帰(心の再建)を図る一連の営みを、
一般的には「グリーフワーク(悲観の癒し、悲哀の仕事など)」と呼びます。
本書を著した「倫理版グリーフワーク研究チーム」は、
文献調査研究および遺族への聴き取り調査研究によって、
純粋倫理における悲嘆を癒す特徴的な取り組みを抽出しました。
一般的なグリーフワークプログラムの役割は、
「遺族が悲嘆を癒し、新たな生きがいを発見するまでの伴走者」
であるのに対し、
同研究チームのめざすグリーフワークはそれらに加えて、
「故人との関わりを積極的に持ち、さらに絆を深めるとともに、肉親の死を契機として遺された家族の成長を促す」ことを視野に含みます。


本書の第一章では、
倫理版グリーフワークの方途とその効果・作用について詳述しています。

第二章では、最愛の肉親を亡くされた方々が、
その深い悲しみをいかにして受け止め、悲しみを癒し、
前向きに生きるに至ったかについて、
20件以上の聴き取り調査の中から5例を紹介しています。

そこには、悲嘆に暮れる日々の中から、
純粋倫理の学習と実践により亡き人の存在を身近に感じ、
〈(亡くなった肉親は)なお、私たちを支えてくれている。本当に幸せだ〉と、
肉体はなくとも人の「いのち」の永遠を確信し、
さらに、〈今までより(精神的に)一段上の生活ができるようになった〉と、
自らの生へのエネルギーを強くするに至った成長の過程が刻まれています。


本書を通して、自分を責め続けて来られた遺族の方々が悲嘆を癒し、
人生における再出発の第一歩を踏み出すきっかけとなることを願います。

 

《目次より》

はじめに
 「倫理版グリーフワーク」の確立へ向けた研究の経緯
 純粋倫理における死生観
 一般的なグリーフワークとは

第一章 悲しみを癒す倫理的方法とその効果
 
一、悲しみを癒す倫理的方法

 二、倫理版グリーフワークの方途とその作用
  【一】「故人への語りかけ」の実践
  【二】「故人の遺志を引き継ぐ喜びの働き」
  【三】御霊に対する積極的な「感謝」の実践
 三、「ありがとう」は死別の準備教育的実践

第二章 体験に学ぶ
 「ある朝、十四歳の娘が逝きました」
 「突然の交通事故で息子を喪って」
 「働き盛りの夫は七人の子を遺して逝きました」
 「二十二歳の娘が突然、交通事故で」
 「高一の次男が急性心不全で」

終章
 簡単には解明できない死の問題
 一般的なグリーフワーク完了の基準
 肉親の死は、己の人生再構築のはじまり

 

本書は倫理研究所ホームページ内、

倫理の本棚(オンラインストア)」よりご購読いただけます。

新世(2017年2月号)

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倫理研究所/¥200
A5判 112頁

 

2月号の特集は「もとにつながる」をテーマにしました。
江戸時代、米沢藩主の上杉鷹山は、
「父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い」と伝え、
顕著な孝行者には褒美を与えていたそうです。
父と母は、この世に自分を産み出してくれた生命の根本(もと)です。
本特集では、嫁ぎ先の両親、自身の両親、
あるいは事業の創業者に“つながる”ことで、
家庭が安定し、事業が繁栄した、3名のレポートを紹介します。

 

 根本につながるとは、自分を生み育ててくれた両親を始め、これまでに受けてきた沢山の恩を自覚するということです。

 人生という航路は、常に順風満帆とは限りません。家庭生活や仕事、あるいは企業経営を進めるにあたって、荒波に襲われてなかなか立ち直れなかったりするケースもあるでしょう。一つの物事を一貫して続けるのが成功の秘訣だと認識していながら「なかなか持続できません」と話す人もいます。

 何故かといえば、それは根本を忘れてしまっているからではないでしょうか。ここ(土台)をきちんと固めておかないと、あと一歩というところまでこぎつけながら、最後で崩れてしまうケースが少なくありません。(中略)

 何かしらの壁にぶつかったとき、〈親を始め、沢山の人が応援してくれているんだ〉と受けてきた恩を思い起こし、初心に立ち返るとき、気が引き締まり、新たな展開が開けてくるのです。(「まとめ」より)

 

「まとめ」では、恩意識を深めることの意義に加えて、
恩を深めるための具体的な実践のポイントを分かりやすく解説しています。

連載の「新世言」では、
先に行なわれたアメリカ大統領選での一幕を例に挙げながら、
今日求められる強い国家とは何かについて考えるとともに、
激変の時代を生きる国民の課題として、
自立と奉仕の精神の涵養について提言しています。

先月号から「実践の軌跡」と名称を変えた「体験記」では、
“責め心”を捨てる実践により生まれた親子の絆や、
夫婦愛和の実践の妙味や醍醐味について、
解説を添えてお伝えします。ご一読ください。

 

《目次より》

巻頭言
・新世言「自分にできることは何か」丸山敏秋(倫理研究所理事長)

巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」(83)-上原勇七(印傳屋)

特 集
・もとにつながる

  ・レポート「亡きお姑さん、あなたの娘で幸せでした」
  ・レポート「両親の後ろ姿に学び、地域に喜ばれる店作りを」
  ・レポート「創業者の父と共に築く、地域に根ざした医院」
  ・まとめ「連綿と受け継がれ、支えられてきたわが命」

連載
・美しきあきつしま2「伊勢の入り口 斎王の都 三重県三和町

・古典を旅する 日本の源流を尋ねて2「万葉集 旅の歌人」安田 登(能楽師)
・大地に生きる2「森の哲学者 フクロウ」宮崎 学(写真家)
・世界の家族ごはん2「イタリア編」
・和食のある食卓2「春一番の幸せ」藤井まり(精進料理研究家)
・実践の軌跡

「『ありがとう』は父との心の架け橋」増田勇二(家庭倫理の会延岡市)
「妻との心の一致で羽ばたいたケーキ店」竹村 茂(広島県倫理法人会)
・明日へのエール26「『まごころ』実践した方々へ。富士の麓から、大返信」
・グローバル時代の倫理運動4「台湾・中華民國倫理研究学会2」
・わくわく子育て親育ち13「人と人とのつながりが、子供の心を涵養します」

 

定期購読及びバックナンバーも購読できます。

倫理研究所ホームページ内
倫理の本棚(オンラインストア)」よりお申込みください。

生きる道

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丸山竹秋著
PHP研究所/¥952(税別)
A5判 255頁

 

45年にわたって倫理研究所の理事長を務めた著者は、
雑誌『倫理』に621本、『新世』に600本を寄稿したほか、
26冊の単行本を上梓するなど、膨大な量の原稿を書き遺しました。
それらの中から、「運命をひらく生き方」のエッセンスを抜粋し、
一冊にまとめたのが本書です。
本文は9章112編からなり、見開きで1編完結の短編集です。

 

 人は、相手を責めるよりも前に、自分自身を改革せよ。かくすることによって、自らの人間性は高まり清められ、相手もそこを認めざるをえなくなる。

 人を許さない者は、おのれ自身も人から許されない。そして苦しむだけである。人を牙でかめば、また自分も牙をもってかまれるのだ。

 許すことは、妥協することではない。(中略)相手の人の魂を、同じ人間として認め、受け入れることなのである。

 自分には厳しくとも、他人は許すがよい。自分の過ちには厳しく反省しても、他人の過ちには寛容であるべきだ。
(「人の世を生きる知恵」より)

 

人生いつでも順風満帆でありたいものですが、
「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」の繰り返しが人の世の常とも言えるでしょう。
もし、苦難に遭遇したとき、心の備えができていれば、
うろたえることなく受け止めて、
人生を切り拓くことができる、と著書は説きます。
それでも、どうにもならないときの心もちについて、こう記します。

 

 どうにもならないものは、進んで喜んで受け入れるほかはない。

 貧乏な家に生まれたことを悔やむよりも、むしろ「これがいいのだ」と、大いに張りきることだ。そして毎日毎日、気持ちを新しくもち、きょうも生まれ直して働くぞと、仕事に取り組んでいくことだ。そこに自分自身の開闢がある。開闢とは天地の開け初めのことだ。(中略)

 自ら開発に転じて「さあ行こう」と積極的に打ちだしていくのが、人間の日々の開闢なのである。これは人間の変わり得る面であり、やればやれる部分なのである。(「逆境をはね返す」より)

 人生は繰り返しの相にある。輪が巡るように、いつもまわっている。

 繁栄と衰亡は、個人、団体、国家などにおいても、繰り返しているではないか。幸福や苦難もそうだ。幸福だといって、いい気になっていると、たちまち苦難がやってくる。苦難のただ中にほうりこまれているときでも勇んで喜んで働いていると、すぐに幸福が訪れる。
(「生命を育むもの」より)

 

日々の生活の心構えは言うに及ばず、
家庭、仕事への向き合い方や、
日本人としての誇り、死生観についても触れ、
豊富な例話をもとにピンチをチャンスに変える「生き方のツボ」が全編にぎっしりと詰まっています。
その一言ひと言が心に響き、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

物事に行き詰ったとき、
トラブルに見舞われたとき、
大きな障壁に進路を塞がれたとき、
本書を手にしてみてください。
活路が開け、そっと背中を押してくれます。

 

《目次より》
己を磨く
人の世を生きる知恵
日々の生活を大切に
道をひらく生き方
逆境をはね返す
日本人としての誇り
家族の絆
生命育むもの

 

本書は倫理研究所ホームページ内、 

倫理の本棚(オンライン)」よりご購読いただけます。

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