倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

竹のごとく―丸山竹秋の「耐え抜く力」に学ぶ

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丸山敏秋著

新世書房/定価¥1,000(税込)
B6判 240頁

 

昭和の敗戦後、
焦土と化した日本において、道義の再建を掲げて決然と立ち、
たった一人で倫理運動と呼ばれる社会教育運動を創始した丸山敏雄。
敏雄の死後、45年にわたり倫理運動を牽引したのは長男の丸山竹秋でした。
昭和26年12月に倫理研究所の理事長を継ぐと、
昭和41年からは静岡県御殿場市に、
「富士高原研修所」「丸山敏雄記念館」「富士倫理学苑」を相次いで開設。
晩年には地球倫理を提唱しました。
平成11年に逝去するまでに書き残した膨大な研究論文は、
倫理運動における貴重な知的財産になっています。

本書は、丸山竹秋の生き方や業績を丹念に振り返りながら、
そこに通底している「耐え抜く力」を浮き彫りにします。

 

 思えば、現代人は耐える力、耐性がめっきり衰えてしまった。便利な文明の利器に囲まれ、物の豊かさと安楽を追い求める生き方が好ましい、とされてしまったからだ。欲求が容易にかなうことに慣れさせられてしまったからだ。しかし、そのような生活は、砂上の楼閣に等しい。ひとたび電気が、食料の供給がストップしたら、今のような生活はたちまち崩れてしまう。

 そのとき、果たして耐えられるか。そもそも耐え抜くことなしに、ほんとうの幸福が味わえるのだろうか。

 

 丸山竹秋の人生をかえりみると、少年期から耐え抜くことの連続だった。実父でもあり恩師でもある丸山敏雄の導きにより、忍耐を超えた喜びを追求するという課題も与えられていた。それがどういうことだったのかを、これから辿っていこう。(「プロローグ」より)

 

第一章「父と子の軌跡」では、
丸山竹秋の幼少期から倫理研究所理事長に就任するまでの、
父と子のそれぞれが遺した日記や歌、小説を覗き見ながら、
「耐え抜く力」が培われた軌跡を見つめます。

第二章「忍耐をどう超えるか」では、
倫理研究所理事長として、
45年間にわたり続けた「倫理の研究」にスポットを当て、
その思想や信条、研究姿勢を紐解きながら、
一貫不怠の精神がいかに発露されてきたかを追っています。

第三章「耐え抜いて生きる」では、
偉ぶらず、高ぶらず、
質素を喜び、尊び、簡素を愉しんだ生き方について、
私生活のエピソードと著書や短歌を通して見つめるとともに、
晩年提唱した「地球倫理」との接点について探ります。

 

 人生はまさしく、いろいろである。自分には、この人生より他に人生はない。しかし他者の人生を謙虚に学べば、そこから、わが人生を創造していく貴重な糧を得ることができる。その人物を、胸中にどれほど生き生きと甦らせるかが、学びの深さに比例するのだ。(中略)

 

 人はみな、それぞれの境遇において、耐え抜きながら生きるのだ。耐えることなしに、真の生きる喜びは得られない。耐え抜いていけば、悪路も拓けていく。仕方なく我慢するのではない。心持ちを切り替えつつ、希望や使命感を抱いて耐え抜くとき、忍耐は歓喜に変じる。(「エピローグ」より)

 

激動の昭和を「耐え抜く力」で生き抜き、
倫理運動の柱として守成の業に徹した丸山竹秋は、
生涯にわたり「学び」続けました。
本書はそうした学びの記録の一つであり、
現代を生き抜く上で多くの示唆を与えてくれます。
ご一読ください。

 

《目次》
プロローグ

第一章 父と子の軌跡 耐え抜く力はいかに培われたか

悲しき別離
強められた父と子の絆
帝都から戦場へ
軍務に耐える
運命の決断

第二章 忍耐をどう超えるか

一貫不怠の研究
忍耐は是か非か
忍耐から世界平和へ

第三章 耐え抜いて生きる

質素を尊ぶ生き方
質素な生き方を生む思想
昭和天皇の耐え抜く力
昭和天皇と地球倫理

エピローグ

 

倫理研究所ホームページ内

倫理の本棚(オンラインストア)」で販売しています。

新世(2017年3月号)

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倫理研究所/¥200
A5判 112頁

 

一組の男女が巡りあい、縁あって結婚すると家族が誕生します。
新たに伴侶の両親との関係が生まれ、
子供を授かれば親になります。
しかし、違った環境や家庭で育った二人が一緒に暮らせば、
互いに合わない面が目に付くこともあるでしょう。
そこを如何にして合わせていくかが、夫婦円満の秘訣です。
夫婦の心が一つになったとき、家庭の土台が固まり、
両親や子供との関係も豊かに育まれていきます。

2月号の特集は「夫婦のつながり 親子の絆」です。
夫婦が互いに心を寄せ合い、良い関係を築くことで、
親や子供、祖父母や祖先との絆が深まり、
円満な家庭づくりや、家の継承、
事業承継へとつながった3名のレポートを紹介します。

 

 子供が問題を起したときは、親自身が先ず日頃の生活を冷静に振り返ってみることです。夫婦の関係はどうでしょうか。夫婦で温かな挨拶を交わしていますか? 特定の人を嫌ったり、遠ざけたりしていないでしょうか。

 夫婦は一組の向かい合った鏡のようなものです。子供に何かしらの問題が起きたとき、「君がしっかり子育てしないからだ」「あなたが協力してくれないからよ」と、どうしても相手のせいにしがちです。しかし、ここが肝心要です。お互いが自分を振り返り、相手の足りないところは補い合ってみましょう。この努力が自分を成長させます。(中略)夫婦の関係改善は、子供にも反映されていくのです。もちろん、子供は親夫婦のよいところもまた、そっくりそのまま受け継いで育つのは言うまでもありません。(「まとめ」より)

 

「まとめ」では、夫婦の関係が家庭や子供にどのような影響を及ぼすのか、
具体的な事例をもとに紹介し、
良いつながりを生む実践のポイントを解説しています。

連載の「新世言」では、
元寇への鎌倉幕府の対応を例に挙げ、
地震をはじめ予測不能な自然災害が頻発する時代を生きる上で、
私たちが実践すべき三つの備え、
「物の備え」「行動の備え」「心の備え」について提言しています。

純粋倫理の学びと具体的な実践を記した「実践の軌跡」では、
重い病を受けとめ、夢や目標の実現をめざした母親と、
それを支えた娘による実践と心の交流の体験、
また、後継者倫理塾に参加し、事業の易(変えなければならないもの)と、
不易(変えてはいけないもの)を学ぶことで、事業承継の決意を固め、
堅実な事業経営を実現した体験について、
解説を添えてお伝えします。

 

《目次より》

巻頭言
・新世言「安心のための『三つの備え』」丸山敏秋(倫理研究所理事長)

巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」(84)-井上晃雄(株式会社福助屋商店社長)

特 集
・夫婦のつながり 親子の絆

  ・レポート「娘夫婦が祝ってくれた金婚式」
  ・レポート「家の継承といのちの誕生」
  ・レポート「お母さん、産んでくれてありがとう」
  ・まとめ「家庭のよき空気をはぐくもう」

連載
・実践の軌跡

  「有言実行の母に導かれ、夢を実現」
  「全顧客を大切に。父の精神を引き継いで」
・明日へのエール27「変革をチャンスに変えよう」
・グローバル時代の倫理運動5「南カリフォルニア倫理法人会①」
・わくわく子育て親育ち14「竹の如く、強くしなやかに。挨拶で日常に節目を」
・美しきあきつしま3「海の集落 舟屋の暮らし 京都府伊根町
・古典を旅する3「浦島 夫婦の契りの物語」安田 登(能楽師)
・大地に生きる3「森の働き者 ノネズミ」宮崎 学(写真家)
・心を伝える美しい日本語 山下景子(作家)
・世界の家族ごはん3「アラスカ編」
・私の家族3「マゴたちのこれから」椎名 誠(作家)
・和食のある食卓3「タイで精進料理講習会」藤井まり(精進料理研究家)

 

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丸山敏雄と日本 倫理文化研究叢書4

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丸山敏秋著
倫理研究所/¥3,000
A5判上製 343頁

 

倫理研究所の創設者・丸山敏雄は、
日本の古代史や神話を専門的に研究する研究者でもありました。
神話に由来する日本の國體こそ、
敏雄が生涯を賭して追及し続けた対象であり、
國體を深く研究することで、
「純粋倫理」と呼ぶ生活法則の基盤を見出しました。

第一部「國體と神話―丸山敏雄が挑んだもの」では、
丸山敏雄が遺した未完の著『天皇制の研究』と『奇蹟の研究』を中心に、
戦前の國體をめぐる状況や、
敏雄が生涯の恩師と仰いだ倫理学者・西晋一郎の國體観を踏まえながら、
天皇および皇室と「国民の倫理」のあり方を考察します。

 

 大きな共同体の枠組みとしては国(国家)がある。多民族国家であろうと、ほぼ単一民族による国家であろうと、そこには国民が共有する倫理、すなわち「国民の倫理」が存在する。歴史や伝統の中で自然発生的に生じた倫理(無意識的に機能する倫理)から、かぎりなく「法」に近い規範として機能する倫理(作られた倫理)まで、その中身は多様であるが、「国民の倫理」が存在しない国はない。

 「もったいない」と物品を粗末にしない態度は(中略)物品を「(神仏からの)頂きもの、授かりもの」として受けとめた質素倹約を尊ぶ倫理的行為だといえよう。そうした倫理観や倫理的態度は、ささやかなことかもしれないが、独特な国民性を築き、社会システムを形成する上でも少なからず影響する。

 自分の得た金品を私物とせず、賜り物として有り難く拝受する精神と行動は、きわめて倫理性が高く、一定の国や民族という条件を超えた普遍性を持ち得るのではなかろうか。そしてそのような精神性が、グローバル資本主義が荒れ狂った後の今日ではとくに強く求められているのではないだろうか。金品を「賜り物」と受け取る倫理精神と態度に立つとき、どのような社会システムが構築できるだろうか。かつて日本にあった「皇国」という意識や國體思想(かならずしもそのすべてを肯定できるとはかぎらないとしても)を再検討することで、見えてくるものがありはしないか。(第一部「丸山敏雄と『天皇制の研究』」より)

 

第二部「影響と比較―丸山敏雄をめぐる人たち」では、
敏雄の思想形成に大きな影響を与えた西晋一郎、
敏雄と同じく戦後の混乱期に「道義の再建」に獅子吼した天野貞祐
敏雄が宗教の道を歩んだ時代の同輩であり、
弾圧事件により長い裁判を闘う同士であった湯浅真生を採り上げ、
それぞれが追求した「日本または日本人の在り方」を比較しながら、
丸山敏雄の思想について探究していきます。

 

 西晋一郎の学問はもともと哲学的な理論研究よりも実践に重きが置かれ、わけても倫理道徳の実践こそが最重要であるとされる。実践とは地に足を着けたものでなくてはならない。われわれが生きる地平とは、なによりもまず家であり、国であった。実践的な倫理学者として、西は積極的に国家のありかたについても論じ、明治国家における倫理実践の原理を追求しつづけた。(第二部「西晋一郎における道徳と教育」より)

 人間は各々の持ち場において、職分において、道理を実現していく実践者(創造者)である。何人も自分は無意義な存在であると考えては力強く生きられない。自分自身が道理の媒介者であると考えることによってはじめて、人生を力強く歩める。自分の器量に従って道理の実現に努力するところに人生の意義が存在すると同様に、民族や国家も道理の実現においてその存在の意義があると天野は説く。
(第二部「道理の感覚に根ざした道徳論」より)

「ひとのみち」教団の場合、修養道徳の面が強く印象づけられる。(中略)救済に至るには受けての信仰心だけでなく、確かな実践力が不可欠とされる。丸山敏雄も湯浅真生も、教団が教える個々人の実践に基づいた救済力の大きさに魅了されたのだ。(第二部「宗教との出会いに至るまで」より)

 

生涯にわたり日本あるいは日本人の在り方を真摯に追求しつづけ、
万人普遍の生活法則として「純粋倫理」を発見・研究・唱導した丸山敏雄。
丸山敏雄という人物を通して、見えてくる日本があります。
ご一読ください

 

《目次より》
緒言

第一部 國體と神話―丸山敏雄が挑んだもの

 序 節 丸山敏雄と『天皇制の研究』
 第一章 日本の國體思想概観
 第二章 丸山敏雄の國體観
 第三章 丸山敏雄の幽顕観―「出入幽顕」の語をめぐって

第二部 影響と比較―丸山敏雄をめぐる人たち

 第一章 丸山敏雄と西晋一郎
 第二章 丸山敏雄と天野貞祐―「道徳の再建」をめぐって
 第三章 丸山敏雄と湯浅真生―「ひちのみち」入信の動機と過程の比較考察

 

本書は倫理研究所ホームページ内、

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