倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

歌集 天地

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丸山敏雄著
新世書房/定価¥1,200(税込)
A5判 248頁

 

倫理研究所創立者丸山敏雄は、
短歌を作ることによって生活を浄化し、
個性を発揚することを目的として、
昭和21年に「しきなみ短歌会」を創設しました。
 
本書は丸山敏雄の第一歌集であり、
「しきなみ短歌会」が発行している月刊『しきなみ』誌に
発表されたものを収めています。
「天地」とは、創刊号(昭和21年3月号)の巻頭を飾った歌題です。


短歌の一部をご紹介します。 

 

天を父と地をたらちねの母として生れにし子ろぞ汝も吾も
 
大海の五百重の潮路光立ちしきなみよする大和国
 
天地のあや織りみだれ花咲くと大和島山春は来にけり
 
はてしなき宇宙に浮かむ水滴のあるかなきがにかそけき命
 
さつき晴れ風まさやかに武蔵野の木々音たてて夏ならむとす
 
水平に遠山かけて引く霞視野ほのぼのと馬鈴薯の花
 
天の原あまねき日足うすれゆき玲瓏として富士の紫
 
高原に雲を眺めて幾日ぞやいういうとして天に近づく
 
天津日は扇ぎ返せし入道や写せし経の文字のやさしさ
 
寒に入り望の夜なれば高杉のまほらにありて月すみわたる
 
我が願ひたぐひも無けれしみじみと人類の幸思ふなりけり

 

「歌を詠むことは、自らにして、うれしい自己反省であり、快き鍛錬であり、不知不識(しらずしらず)の向上である」
 
これは丸山敏雄の言葉です。
 
一人でも多くの人が「美の奥境」に住まうことを念願し、
自らが先頭に立ち歌境心境の鍛錬につとめた著者。

41歳から短歌を学び始め、
59歳で没するまで約6,500首という歌歴の中で、
最晩年に属する歌を集めた本書は
著者の作歌精進の集大成ともいえます。
 
この世のすべての「いのち」が、
善悪美醜を超えて光り輝いてくる短歌の世界を、
感じとっていただければ幸いです。

 

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