倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

書道藝術

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丸山敏雄著
新世書房/定価¥2,500(税込)
A5判上製 354頁

 

著者は17歳の頃から書の世界に親しみ、
生涯にわたり一日一回必ず筆を持つことを実行し、
それを他人にも勧めてきました。
昭和13年には「秋津書道院」を興し、
書道の教授として指導をする傍ら、
書友の更なる飛躍を願い、書き下ろしたのが本書です。

 

書道は私にとっては、いわゆる専攻の題目ではありません。しかし、少年の頃以来、一日としてこれと離れることができず、数十年来、熱愛を続けてきた生活の糧であります。まことに書の芸術境こそは、至高至楽、去らんと欲するも能わざる美の奥境であり、書道は人生の美的境涯に透徹するの大道であります。

本書は、書を学ばんとして良師を得ざる同好の友の為に、数年にわたって所信を講じたものであります。従って、書道に入るための一通りのことは、こまごまと述べるに努めました。(「序」より)

 

本書は芸術としての書の奥境を探究し、
修練による心の浄化・向上をめざす人々に向けて、
書道に向かう心構えから、姿勢、文房四宝の扱い、
筆順や筆法から、作品創作への道程までを懇切に詳述しています。

 

上達の秘訣が、ただ一つあります。それは「勉強すること」で、そのほかに何もありません。その勉強の方法に、二つの方向があります。一つは書くことで、他の一つは観ることであります。そして、この両方面を毎日続けていけば、必ず、年月を経ずして、著しい飛躍的な進歩を致します。〔中略〕とにかく毎日、十分でも二十分でも、必ず、お習字の時間をとることです。一日に一回は必ず筆をもつということです。(「第一章 生活と書道」より)

正しい心は、正しい姿勢にのみ保たれるものでありまして、ふしだらな、しまりのない卑俗な姿勢には、正しい美しい心の宿りようがありません。ねそべったり足をなげ出ししたりしては、しっかりした緊張した心、やさしく美しい優雅な心はもたれません。これと反対に、少し心がみだれていましても、姿勢を正すと、おのずから心も正されてくるものであります。

正しい、高雅な、また優しく、うるおいのある人でなければ、よい文字のできないゆえんはここにあります。(「第二章 姿勢と執筆」より)

一道に達した人たちが、その用具を大切にしたごとく、書道に志す者も、第一、その用具を大切にしなければなりません。

そして用具への愛着、たしなみは、進歩の度と正比例して向上してくるものであります。筆や紙を粗末にし、ぞんざいに取り扱うものに、まず能筆家は無いと申してよいでしょう。そんな心掛けでは、けっしてゆかしさのみちあふれた、味のある書が生れてくる道理はありません。

その人の用具に対する、優にやさしい心掛けそのままが、書の気韻となり雅致となって、表現されるものであります。(第三章「筆」より)

 

「行きづまりこそ、大成の基。壁一重のところに進歩がまっている」と、
会友を教え導き励ましながら、また自ら研鑽の日々を楽しんだ著者。

本書では書道の妙境をあますところなく伝えるべく、
書道にまつわる全てにおいて、心の練磨を重視し詳説しています。
単なる技法の手引きではなく、
著者の謦咳に触れることができる一冊です。

 

古人は「書は心法なり」と申しました。法とは、のり、真理、そのままのもの、まざり気も、かげもない、純粋無垢というほどの意味でしょう。世に書家といえば、ただ技巧のうまい人をいいがちでした。しかし技巧は、いつまでたっても技巧以上に出ません。心を深め、人がらを高めなければ、ほんとうの書をかくことはできません。(中略)

書は心です。人がらです。手先のきようさではありません。しかしそれは、書の一番奥を申したのであって、始めはそのもとになる、姿勢・筆法・結体・布置・脈絡・ちらし・つづけ方など、美しさの法則をしっかりつかむように、けいこせねばなりません。(第四篇 補遺 書道随感「書は心」より)

 

 

《目次より》

第一篇 基本
第一章 生活と書道
第二章 姿勢と執筆
第三章 筆
第四章 紙
第五章 硯
第六章 運筆法
第七章 用筆法
第八章 基本練習について
第九章 筆意・筆順
第十章 間架結構法
第十一章 行書法
第十二章 草書の本質
第十三章 芸術としての仮名書道
第十四章 仮名文字の説(その一)
第十五章 仮名文字の説(その二)
第十六章 仮名連綿体について
第十七章 変体仮名について

 

第二篇 鍛錬

第十八章 手紙の書き方
第十九章  条幅の書き方、落款・印章
第二十章 額の書き方
第二十一章 色紙・短冊・扇面の書き方
第二十二章 学書三燈(一)
第二十三章 学書三燈(二)
第二十四章 学書三燈(三)
第二十五章 書道上達の秘訣
第二十六章 行きづまりと型にはまること

 

第三篇 奥境

第二十七章 臨書について
第二十八章 書論について
第二十九章 和様と唐様
第三十章 書の鑑賞(その一)
第三十一章 書の鑑賞(その二)
第三十二章 愛書の説
第三十三章 何が為に書道を習うか
第三十四章 書道芸術と婦人
第三十五章 空所と書道
第三十六章 芸術書道
第三十七章 書道の奥境

 

第四篇 補遺 書道随感

 

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