未知への旅Ⅱ-安曇野から見る日本
丸山敏秋著
新世書房/定価¥1,100(税込)
B6判 256頁
以前に本ブログでご紹介した『未知への旅』は、
大学生の晃と紗江子が鍼灸医の杉山先生との出会いを通じて、
日本の歴史や伝統文化の本質について再発見していく物語でした。
本書はその続編です。
信州の郷里に住居を移した杉山先生を訪ね、
10ヶ月ぶりに先生との再会をはたした晃と紗江子。
最初に三人は碌山美術館を訪れ、
日本の近代彫刻の草分けである萩原碌山の傑作、
「文覚」と「女」を鑑賞します。
鎌倉幕府の成立に関与したといわれる奇僧「文覚」。
「女」のモデルとされる相馬黒光。
碌山はなぜ、その二人の人物を作品にしたのか。
杉山先生の解説に目を輝かせる晃と紗江子。
北アルプスの麓・安曇野を舞台に、
再び「未知への旅」がはじまりました。
それは、教科書には載っていない日本の歴史に触れる旅であり、
日本のために活躍した人達の群像に触れる旅であり、
日本文化の特質や美質を再発見する旅でした。
いくつもの日本の姿があるんだ。この日本列島には長い間に、いろいろな種類の人たちが生活の根を張って、文化を築いてきた。日本はもともと他民族国家でありながら、いくつもの日本が重層的にあって、恵まれた風土の中であるまとまりをなしてきている。先人が築いてきた文化の最先端に、いまのボクたちはいるんだ。
自然豊かな風土に培われ、言語や食事、嗜好に表われる国民性。
昔話や民話に込められた生きる上での知恵や勇気。
日本の国力を支えた気高いヒューマニズムと至誠の精神。修養の気風。
教科書では語られない歴史と伝統文化の本質に触れることは、
現代人の生き方に多くの示唆を与えてくれます。
アイデンティティー(自分が自分であることの証明)や物事の真実を知りたいと願うのは、人間の本性です。その願いを、覆い隠してしまう生き方を強いられている人々が多いのもまた事実でしょう。大人になりたくないという若者たちの気持ちが、わからないでもありません。若者たちこそ、真実を示唆し物語ってくれる機会との遭遇が必要なのです。
(中略)安曇野にかぎらず、読者の方々がいま住んでいる場所や、大好きな場所から、われらが祖国日本を覗き見ることをお勧めします。長い歴史のなかで培われた重層的な日本の文化、各時代を真摯に生きた人々、いくつもの日本の姿が立ち現れてくるでしょう。そして「内なる日本」は、現代を生きるわれわれに力強いメッセージを投げかけてくれるにちがいありません。(「著者あとがき」より)
未知の世界へ踏み込んでいく旅は、
未来を切り拓く勇気へとつながります。
ご一読ください。
《目次より》
プロローグ 再会
1早春の安曇野
2文覚と鎌倉
3明恵の見た月
4サロンの群像
5文字の発見
6昔話のちから
エピローグ 終わりは始まり
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