倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

毅然と立つ―体験で綴る経営者の決断

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倫理研究所
新世書房/定価¥1,000(税込)
新書判 152頁

 

企業活動の第一線で生き残りを賭けた厳しい現場に立ち、
何を考え、どのように行動したか、
6名の経営者の実体験が記されています。

熊本県八代市で仕出し店及び料亭の経営に携わる緒方一義氏。
昭和48年に「緒方商店」を創業し、
その後、仕出し店を9店舗、「料亭おがた」を構えるまでに伸張する中、
一攫千金を夢見て起した新規事業の失敗を端緒に、
船の爆発事故、50名の被害者を出した食中毒問題、
社員の死亡事故や早期退職者の続出など、
数々の苦難に遭遇します。

 

「思い返してみると、交通事故やトラブルの連続でした。金儲けばかりに目がいき、まわりが全く見えていなかったのです。売り上げのために仕事は一切断らず、不眠不休で社員を働かせていました。(中略)乗客二十五名が負傷という大事故を起こしたこともあります。目の前が真っ暗になりました」

「『会社は社長の器以上には大きくならない』といわれますが、私はその器以上のものを会社や社員に求めていたのでした。業績がいい時には、自分のお陰でこの会社は成り立っているんだという傲慢な気持ちでいたのです」

 

業状をよくするためには、まずは自らが変わらなければと、
緒方氏が門をたたいたのが倫理法人会でした。

早速、活力朝礼を導入し、
始業前の社内清掃に率先して取り組むなど、
〝倫理〟を経営に取り入れ研鑽に励んでいた矢先、
再び食中毒事件に繋がりかねない事態に遭遇します。
正月のおせち料理に異臭がするとのクレームが入ったのです。
すでに1,200個を受注し、
元旦に間に合わせるべく全社員がフル回転で取り組んでいた、
晦日の午後3時の出来事でした。

 

パニック状態の中で浮かんできたのは、〝倫理〟を学ぶ中で知った「捨我得全」という言葉だった。〈この実践に賭けよう〉と氏は即断した。「すべての責任は自分がとる」と、その場で社員に宣言。社内は騒然となったが「お客様の希望通りにしなさい」と、配達を終えて戻ってきた営業マンを各家庭に再訪させ、巻き寿司は傷んでいるので食べないよう伝えさせた。(中略)「キャンセルされたら引き取る」「お客様の言うとおりに値引く」「メーカーの名前は絶対に出さず、すべて自社の責任とする」等を徹底させ、配達済みの各家庭を一件一件、社員全員でまわった。

 

ありとあらゆる経営手法を駆使し、
万策尽きた後に経営者が打つべき手とは何か。

本書に登場する経営者たちは、
窮地に陥った原因を不況や他社の過失に求めることは一切しませんでした。
毅然として修羅場に立ち、
責任のすべてを経営者自からが引き受け、
現状突破を果たします。

 

「大窮地に陥った時こそ、度胸の見せどころである。地位も、名誉も、財産も、生命も、一切を捨ててしまう。結果は考えない。これが『捨我得全』の考え方です。難局を乗り切るための最大の秘訣だと知らされました。〝倫理〟を旗印とする経営に理屈はいらない。〈すべてを捨てた時、目前に道が拓ける〉と、実感した尊い出来事でした。これから先、このお客様方を二度と裏切ってはならないと強く念じました」

 

「〝倫理〟にしても魔法ではありません。一つの苦難を抜けてステップアップしたなら、またそこに苦難が待っているものです。〝倫理〟を実践しているから波風が立たないとうのは、少し甘い考えでしょう。苦難と出会うたびに何かを学び、階段を一つのぼる。それが倫理経営の醍醐味だと思っています」

 

残酷なほどに繰り返す苦難、
顔色を失う失策、
踏み間違いなどを経て経営者達がたどり着いた、
「難局打開の扉」を開く鍵となる「倫理経営」とは何か。
真摯に実践する経営者の体験は、
息を呑むようなドラマに満ちています。

ぜひ、ご一読ください。

 

《目次より》

大窮地こそ度胸の見せどころ  緒方一義
食品づくりの鍵は現場にあり  山﨑貞雄
許し合う心が〝和〟を築く  大村秀明
感謝の心が生むアイデア商品  池 龍昇
見る観光から体験する観光へ  中野吉貫
創業精神に根ざした経営を貫く  照屋義実

 

 

本書は『倫理ネットワーク』(倫理研究所発行・隔月刊誌)に掲載された
「経営体験記」を精選し、改めて取材をして再構成したものです。

倫理研究所ホームページ内、

倫理の本棚(オンラインストア)」にて販売しています。

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