倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

清き耳

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丸山敏雄著
新世書房/¥1,100(税込)
B6判 296頁

 

良いことをすれば幸福になる、
「徳福一致」の生活法則を発見・唱導した丸山敏雄は、
多数の研究論文を執筆しましたが、
一方で、日常生活で誰もが経験する、
身近な題材をテーマとした随想も多く書き残しました。
その中から、日常の暮らしに直結した24篇を厳選し、
一冊にまとめたのが本書です。

たとえば、本書のタイトルの一文字にもなっている「耳」については、
こう記しています。

 

 聞かねば耳ではない。まともに、ありのままに、淡々として私情私意、我情我欲を挿し挟まずに、たださながらに聞く、これがほんとの耳である。
 聞こえても、そのままの意味に取らなかったり、反対にとったり、裏を考えたり、ねじけたり、ひねったりする人の耳は、その耳の穴がゆがんでいるのであろう。ゆがんでいるから言葉がねじけて入って来る。通りが悪い、途中にひっかかる、外情が内達せぬのである。(中略)
「清き耳」――これは子供の耳である。(「耳」より)

 

家庭での振る舞いは言うに及ばず、
人との接し方、生き方など、人の営みの実例を挙げて、
具体的に分かり易く、時に優しく、時に厳しく語りかける著者。
とりわけ、生活の根幹をなす「職業」については、こんな厳しい言葉も並びます。

 

 人生の推進力は働きであり、それが方向を決定したものが職業である。(中略)どのような心がけで務めているかによって、その人の生きる誠意が定まる。職業が、正しい方向をとり、誠意で進んでいるとき、人がほんとうに生きておるのである。これを「天職に生きる」という。(中略)

 目の前のことを、なまけ、きらい、いやがる人には、職業は与えられぬ。己の職業に身命を打ちこむことのできぬ浮気ものは、ただ今日一日、この仕事に、汗を流そう。喜んで進んで力を傾けよう。(中略)はたらきは、己を捨ててその天職につくすところに、成就、結実する。この道行きが人生で、この果てが、至楽至尊の境である。(「職業は人を苦しめるか」より)

 

さらに、「悩み」や「不幸」については次のように説いています。

 

すべてのなやみは己を守ることにより起こる。己を立てることにより起こる。我がままがもとである。(「生きることは悩みであるか」より)

すべての不幸は、わがまま勝手からくる。「わがままを捨てる」。これが、ただ一つの正しい生活であり、他には無い幸福になるみちである。(「捨てる生活」より)

 

家族がぎくしゃくしたとき、
職場の人間関係に悩んだとき、
人生に行き詰まりを感じたとき、本書を開いてみてください。
著者が示す、より良く生きていくための心の持ち方と暮らし方のヒントは、
私たちに大きな示唆を与えてくれます。

 

《目次より》
猫と合理迷信

家庭と動物
帯と鉢巻
早起き
朝のしごと
あいさつ
食事文化
時間
出足と引き足
コロンブスの卵

猿ぢえ
予言者
無眼坊夜話
生命はわがものか
職業は人を苦しめるか
生きることは悩みであるか
うなぎと遺言
真実は何処に
捨てる生活
損得なし
祖孫一身
恵蘇の宿
封建性はこのように生きている

 

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