倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

新世(2017年4月号)

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倫理研究所/¥200
A5判 112頁

 

春は進級や進学など、子供を取り巻く環境が大きく変わる季節です。
わが子の健やかな成長を願い、子育てに真摯に向き合っているからこそ、
いろいろな悩みや戸惑いを抱えてしまうこともあるでしょう。

そこで、4月号の特集は「すくすく子育て『親育ち』」をテーマにしました。
4名の母親による座談会と2名の子育てレポートを通して、
親と子が共に成長し、円満な家庭生活へとつなげる、
子育てのヒントやポイントをお伝えします。

 

 子供が生まれたときって、一瞬たりとも目が離せないぐらい可愛い。でも、その感動を忘れちゃうんですよね。段々と子育てに追われていくうちに。自分の思い通りに育たなくなると、もう悪い子みたいな感じになってくる。(中略)
 この気持ちを世のお母さんたちが忘れずに、時々思い出して子育てにあたってくれたらいいなと思います。

 特に思春期の頃、子供はなかなか言うことを聞きません。反抗されると、お母さんは「キィー」って頭から角が出てくる(笑)。「みんな、同じなんですよ。純粋倫理の子育ては、もう一人のあなたを作ってあげることよ」と聞いたときにはどんなにホッとしたことか。それを皆さんにもお伝えしています。

 夫から「ちょっと来て」と頼まれた時、子供が泣いていたら、「後にしてよ!」と言わないこと。「ハイ! あなた、今は手が放せないのよ。終わってからでもいいかしら」と。ママさん達も忙しくて大変だけれど、夫の気持ちを優先していくことで、夫婦の絆が強くなり、子供も健やかに育つようになるんですよね。(「座談会」より)

 生活の指針としている『万人幸福の栞』第六条に、「子は親の心を実演する名優である」と記されています。親夫婦が正しいみちを歩んでいくとき、子供は自然と良い方向に変わっていくことを、日々実感しながら生活しています。(「レポート①」より)

 

子育ての原則は、
「子は親の姿勢や心境を見事なまでに映し出す」ということです。

子の姿勢に教えられて生活を正すとき、
親もまた、わが子と一緒に人として成長していくのです。
「まとめ」では、そうした親子の相関関係について解説しながら、
良いつながりを生む実践のポイントについて、
具体的な事例を交えながらお伝えします。

 

 子供の行動を必要以上に心配せず、「あなたを信頼しているよ」というメッセージを送ってみましょう。〈自分は親から信頼されている、愛されている〉という安心感は、子供の心に自己受容や自己肯定感を育みます。(中略)

 子育ての過程で親は、様々なことに気づかされます。中には自分の親との関係を振り返り、親に対するわだかまりに気づく方も少なくありません。(中略)こういうことには早い、遅いはありません。気づいた時が無二の好機なのですから。(「まとめ」より)

 

連載の「新世言」では、
今や日本国民の二人に一人がアレルギー疾患にかかっている現状と、
アフリカや南米の一部の部族では花粉症や喘息がない現状とを比較しながら、
何事も中道が理想としたうえで、
衛生面における日々の心構えについて提言しています。

 

純粋倫理の学びと具体的な実践を記した「実践の軌跡」では、
毎晩夫の深酒に悩む妻が、純粋倫理を学び、
夫に寄り添い心を通わせることで夫の飲酒癖が止まり、
やがて家の継承問題の解決にもつながった体験を掲載しました。
さらに、家業の倒産後、再就職先で活力朝礼と出会い、倫理経営の醍醐味を知り、
妻の支えを背景に独立後、頼もしい後継者も得た経営者の体験を掲載しています。
それぞれ解説と併せてご一読ください。

 

《目次より》

巻頭言
・新世言「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」丸山敏秋(倫理研究所理事長)

巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」(85)-中根喜三郎(江戸和竿「竿忠」五世・四代目)

特 集
・すくすく子育て「親育ち」

  ・座談会「『子育てセミナー』が子育てをサポートします」
  ・レポート「笑顔を忘れず。娘と一緒に成長します」
  ・レポート「「『だいじょうぶ』長女の言葉に励まされて」
  ・まとめ「子供は親の心境や姿勢を映し出す尊い存在です」
連載
・実践の軌跡

  「次女の孫夫婦が家の継承者に」
  「亡き父が繫げた“倫理”との出会い」
・明日へのエール28「知識を行動につなげよう」
・グローバル時代の倫理運動6「南カリフォルニア倫理法人会②」
・わくわく子育て親育ち15「親からの信頼と愛情が、子供にとって一番の支えに」
・美しきあきつしま4「先人の知恵 石垣の里 愛媛県外泊」
・古典を旅する 日本の源流を尋ねて4「伊勢物語 終わりのない旅」安田 登(能楽師)
・大地に生きる4「リサイクル巣材で子育て シジュウカラ」宮崎 学(写真家)
・世界の家族ごはん4「フィリピン編」
・和食のある食卓4「日本の知恵の食材・乾物」藤井まり(精進料理研究家)

 

定期購読及びバックナンバーも購読できます。

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倫理の本棚(オンラインストア)」よりお申込みください。

罪の倫理 気づきにくい不幸の原因-やさしい倫理シリーズ⑧

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倫理研究所
新世書房/定価 ¥900(税込)
新書判 220頁

 

人間は集団(社会)を形成し生活しています。
集団生活を維持するために、法律上の規則を作り、
違反者には多くの場合、その罪に対する罰則や刑罰が与えられます。

法律上の罪に対し、倫理上の罪は、
違反したからといって刑罰が与えられるものではないので、
理解しにくいものです。
また、当人は良かれと思ってやっている事が、
実は相手や周囲に対して悪い結果をもたらしている場合などは、
これまでは罪として明確に指摘されてきませんでした。

こうした、知らず知らずに犯す罪を、
倫理研究所創立者・丸山敏雄は「美しき罪」と命名し、研究を重ねました。
著書『実験倫理学大系』の第二章第六節では、
「倫理生活における罪の実証」として倫理上の罪を「破約の罪」「怠惰の罪」
「私的感情の罪」「隠蔽の罪」「詐欺の罪」「人を困らせる罪」
「性をみだす罪」「物に関する罪」の8つに分類し詳述しています。

本書は、そうした倫理上の罪について「美しき罪」を中心に、
それが人生の幸不幸とどのようなつながりを持つかについて、

具体的な事例を交えてお伝えします。

 

 何かにつけ遠慮して他人に譲ることが美徳と思っている人がいる。自分からさっさと行動すればいいものを、「私は結構です」と引き下がる。(中略)

 ある会合での出来事である。役員改選の際に、ベテランの幹部が突然辞任を申し出た。予期しない事態に当惑した中心者はあわてて若い後任者を任命して、どうにか態勢を整えた。ところが後になって当人が「遠慮して辞めると言ったのに、引き止めてくれなかった。やめさせられた」と上層部に訴え、騒ぎが大きくなったのである。一人のために組織は大混乱である。(中略)

 本人は謙遜の美徳のつもりだろうが、そのためにどれだけ周囲が迷惑を被っているか。スムースに流れるはずの高速道路を渋滞させているようなものである。(中略)

 純粋倫理の重要な実践に「即行」がある。気づくと同時に実行することで、スナオの実践の第一歩である。これは言い換えると正直ということだ。遠慮してすぐに実行しないのは自分の本心を偽ることであり、それが罪となるのである。肝心なときに第一感がひらめかなくなるばかりでなく、本当のことが言えない人間になっていく。本心を明かさない人を信用するわけにはいかない。(「第二章 性癖における『美しき罪』」より)

 Tさん夫婦は学生時代から音楽を志し、長い交際の末結婚した。夫は放送合唱団に加入。妻は音楽講師として生計を立てた。夫と妻の垣根を越え協力しあう、友達のような楽しい生活を送っていた。

 ところが、結婚五年目に三人目の子を妊娠したとき、妻は現在の不安定な職業と収入に不安を覚え、〈合唱団をやめて高校の教師になって欲しい〉と願うようになる。この妻の突然の申し出に、夫は困惑した。「私をとるの! 合唱団をとるの!」とつめよられ、夫は観念して教師に転職。

 このときから、万事計算どおりの結婚生活が崩れだした。夫が酒におぼれ始めたのである。酒を飲んでは物にあたり散らす。子どもはおびえ、喘息ぎみの長女に発作が起きる。(中略)

 夫の気持ちや感情を無視して、一方的に妻の考えを押し通したところに根本原因がある。(中略)妻は、家庭のため子どものためという大義名分を楯に、自分が間違ったことをしたという意識がない。(「第三章 知らず知らず重ねる妻の過失」より

 

法律上の罪は、法律を知らなくても、犯せばそれは罪であり、
違反者にはいやおうなしに罰則が科せられますが、
倫理上の罪もこの点は同じです。

大自然」がこれを見逃さず、赤信号(苦難)という形で反省を求められることを、
本書では多くの事例を通して伝えています。ぜひご一読ください。

 

 相手に感謝されない働き、即ち、相手(又は物)を苦しめたり、困らせたりする働きを「倫理上の罪」といい、逆に相手に喜ばれ、感謝される働きを「徳」という。この白(徳)が多いか、黒(罪)が多いかによって人生の勝負が決まるのであるから、「倫理上の罪」は、人生の不幸に直結しており、どんなに努力して、よかれと願っても、罪を犯しながらでは前進しないのは当たり前である。むしろ、なぜこのような不幸に見舞われるのか、原因が分からないのは、こうした罪の現れであるケースが多いといってよい。(「終章」より)

 人は、他人の間違いや欠点はよく目につくが、自分の間違いにはいっこうに気づこうとしない。自分は正しく生きていると思い勝ちである。が、これが己の成長を阻んでいることに気がついていない。

 自分の至らなさを思い知っている人のほうが救われる。真剣に生きようとする。罪も同じで、罪の深さを自覚したときから、自己の変革が始まる。即ち、「罪の自覚」が真人生開眼の第一歩と言ってよい。このことは、本書に挿入されている多くの体験談が雄弁に語っている。(「あとがき」より)

 

《目次より》

序章 積もり積もって罪となる

第一章 罪の自覚と新生へのみち
みんな罪びと/大自然の目はごまかせない/真人生への第一歩

第二章 不幸の源泉となる性癖
性癖における「美しき罪」/肉体に現われた性癖上の罪

第三章 家庭をこわす妻の罪・夫の罪
知らず知らず重ねる妻の過失/女性軽視こそ性をみだす源/生命力を枯らす性の罪

第四章 自立できない子どもたち
伸びやかな芽を摘む錯覚の愛/子の行く手を左右する親の生き方/親が罪の種を蒔き、子が収穫する/子ぼんのうという名の支配欲

第五章 嫁姑の葛藤と生命の継承
婚家の人間になりきれない/「人生の先輩」の三つの罪/生命の流れを絶やす罪

終章 消罪が産み出す生命力
よいことの積み重ねが徳となる/消罪の念が産む巨大なエネルギー/目に見えない「徳積み」のたまもの

 

倫理研究所ホームページ内

倫理の本棚(オンラインストア)」よりご購読いただけます。

われ、日本をかく語れり 倫理文化研究叢書5

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竹本忠雄著
倫理研究所/¥3,500(税込)

A5判上製 367頁

 

世界中のあらゆる文化の基盤に立ち、
多様な倫理現象の調査や倫理思想研究の蓄積により、
現代の人間に生き方の指針を与える力を持った倫理学を構築する――。
倫理研究所のめざす「倫理文化学」はそうした“夢”を内包しています。
その実現へ向けて、多様な研究成果を計画的に刊行する、
「倫理文化研究叢書」の5作目となる本書は、
著者が長年にわたる研究と、海外で発表した、
「日本の精神文化」についての講演録と・対話集です。

文芸・美術評論家であり、
20世紀中期を代表する作家、アンドレ・マルローの研究者としても高名な著者は、
11年にわたりパリに滞在して執筆や講演活動を行ない、
ヨーロッパ各地で正しい「日本」を伝える啓蒙活動に心血を注いできました。 

 

 出国に先立って日本の精神文化復興を念ずる駆け出しの評論活動に入っていたので、パリ生活でも意識はその延長線上にあった。日本での専攻はフランス文学で、コンクールもその部門で受けたが、内面は「日本的霊性」とは何かの問いでいっぱいだった。

 パリはフランスを発見させてくれるところではない。自国を、おのれ自身を発見させてくれる場である。その力たるや大したもので、おそらくそれはローマ文明の後継として「ユニヴァーサル」たらんとする意志と矜持からくるものかもしれない(中略)文明の空気が働くからである。愛にも似て、それは、「分かってくれる」という歓喜を掻き立てる。こうして私は一つの国と深い交わりの関係に入り、その国の言語で己自身を、日本を語ることに云いがたい愉悦を感じ、それを「使命」と感ずるまでになっていた。(「緒言」より)

 

文学・芸術の研究者であると同時に、
誇り高き「日本人」であるという矜持が、
著者を東欧での啓蒙活動へと駆り立てました。
「収斂」をキーワードに、
異なる指標を持つとされていた東西の文化が、
神秘的、霊的思想において同質化されていく意義や必然性を論証した講演は、
ヨーロッパ各地で大きな反響を呼びました。
「講演編」には、著者の50年間のフランス語講演録の中から、
碧眼の聴衆を感動させた5講演を精選し、和訳して収録しています。

「対話編」では、アンドレ・マルローのほか、
バレエ界の巨匠、モーリス・ベシャールとの対話を収録。
フランスを代表する二人の知性が、日本で見つめ体験した、
神性や霊性について語っています。

解説では、
宮崎大学准教授の吉田好克氏が次のように綴っています。

 

 若くしてフランスから与えられた栄誉(昭和五十五年、文芸騎士勲章受賞)にしても、アンドレ・マルローの篤い信頼を勝ち得たことにしても、アカデミー・フランセーズ文学大賞受賞作家オリヴィエ・ジェルマントマ氏との間に結び得た強い絆にしても、それらは、先生の卓越したフランス語力を別にすれば、多くのフランス文学者とは異なり、先生が西洋文学や芸術の研究の傍ら、確固たる日本人であろうとされ、自国の文化や歴史について――愛と矜持に裏打ちされた――研鑽を絶えず積んで来られたから可能であったということです。(中略)

 ジェルマントマ氏もその著書『日本待望論』において、竹本先生について次のように書いています。「彼なしでも日本を発見できたでしょうが、しかしそれは、彼の深い視線のお蔭で知った日本とは絶対に別物となっていたでしょう」と。(「校訂者解説」より)

 

地震による津波に限らず、政治外交上の問題も含め、グローバル化の荒波により、
日本はあらゆる意味で浮沈の瀬戸際に立っていると著者はいいます。
日本文化の防人として異国で孤軍奮闘してきた著者が、
自国の文化を、ルーツを、本質を、
国際社会で伝えることのできる人材の育成を願い、
襷を次世代の若者に託す思いで本書を著しました。
ご一読ください。

 

《目次より》
緒言

講演篇(一)
雨月物語』と日本の幻想世界

「国際スタイル」のかなた―日本現代版画展に寄す
  象徴と神話―日本文化の展開
  文化の対話―ヨーロッパと世界
  武士道と日本的霊性―武蔵の場合

講演篇(二)
 
アンドレ・マルローと那智の滝―宇宙よりのコンフィデンス

  序言 ベルナール・フランク
  序論
  第一章 芸術と死
  第二章 芸術と霊性
  第三章 芸術といのち
  第四章 いのちと宇宙

対話編
 
日本における死 アンドレ・マルローとの対話

  輪廻転生と三島由紀夫 モーリス・ベジャールとの対話

付録
 『アンドレ・マルローと那智の滝』原著への評価
  竹本忠雄 ヨーロッパ活動年譜
  校訂者解説

 

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