倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

ありがとうと伝えたい

皆さんこんにちは。

今日は『ありがとうと伝えたい』をご紹介します。

 

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『ありがとうと伝えたい』
倫理研究所監修
新世書房発行/定価¥500(税込)
B6判 144頁

 

生涯学習の振興を目的に文部科学省が毎年各県持ち回りで開催している、
「全国生涯学習ネットワークフォーラム」(通称:まなびピア)に、
倫理研究所は第1回(平成元年「まなびピア千葉」)より毎年参加し、
様々な事業を展開しています。

その中の一つが、民間ラジオ局とタイアップして放送する、
投稿型のラジオ番組「こころ温まるいい話」であり、
番組提供は平成24年までに13回を数えます。

本書は平成20年までに放送された作品の中から、
「ありがとう」をテーマに54本を厳選し、
さらに珠玉体験手記3本を加えて編まれたものです。


両親、配偶者、子供、職場の上司・先輩・同僚・後輩、友人たち……。
私たちは多くの人に支えられて生きていますが、
身近な人ほど照れくさくて、
面と向かって「ありがとう」とはなかなか言えないものではないでしょうか。
また、相手が遠く離れてしまい、
伝えたくても伝えられない人もいるでしょう。
それでも誰もが心の中に「ありがとう」と伝えたい人が必ずいます。

本書で採り上げた方々にも、
言えなかった「ありがとう」があります。
《大切な想いや感謝の気持ちを言葉にして、あの人に届けたい》
秘める思いが、胸に染み入る一言が、
ぎっしり詰まった一冊です。

 

『母の言葉を胸に』(岡山県・女性)(本書p42より)

 

 〝母危篤〟の知らせがあったのは、午後六時を過ぎた頃。とるものもとりあえず、姉と共に病院に駆けつけました。

 母は四十度もの高熱の上、意識もなく危篤状態。主治医からは、もう助かる見込みがないことを知らされました。

 その晩は高松に住む姉と私が付き添いました。十時半をまわった頃、母は薄く目を開け、ジィッと私を見ている様でした。〈気がついたのでは〉と思い、母の顔を覗きこみました。

 母は一言、「はよう寝なさい」と言いました。それっきり眠りにつき、もうさすれどもゆすれども、気がつくことはありませんでした。

 三日後、最後には笑みを浮かべ、帰らぬ人となりました。

告別式を終えて、母がかけてくれた最後の言葉が胸をよぎります。

               *

 私が二十代の頃、主人は帰らぬ人となりました。当時長男は四歳、次男は新生児。私は二人を連れて働きに出て、休みには実家に行き、彼らの面倒を見てもらいました。そこで「眠い、眠い」と言って横になる私に、母はよくその言葉をかけてくれたのです。

               *

 自らの死と直面しながら、私の顔を見つめ、いたわりの言葉をかけてくれた母。親の気持ちの有難さをしみじみとかみしめ、幾度思い返しても涙が溢れてとまりません。母はどんな時でも、自分のことは一切捨てて、子供たちのことを心配してくれたのだと……。

 おかげ様で、長男、次男も多くの恩と愛に支えられて成長し、就職・結婚。子供にも恵まれ、一社会人としてつつがなく暮らしています。私は一人暮らしをしていますが、母の最後の言葉を支えに生きることができます。

 お母さんありがとう。今も幸せです。

 

 

《目次より》

力強く起き上がる息子に感謝[体験手記]/だんだん(ありがとう)な/五円の想い出/ありがとう!夏の仲間たち/感謝、感謝の三カ月/大声援を背に、電車でGO!/『金の玉子』は涙の味/乙女たちの同窓会/親父の背中/最高の友人/鉄を打つ息子/合わせの着物/手と手をつないで/母の言葉を胸に/二通のプレゼント/一世紀を生きた母

 夫が一番、子供が二番[体験手記]/感謝のメッセージ/一本のアスパラ/父が遺した日記帳/宏美ちゃんの手紙は私の宝物/ゴロゴロする宝物/帰ってくるツバメ/やさしいおまわりさん/季節の花々に包まれて/小さな指の温もり/美しい夫婦/おかげさまで/天使の言葉/夫の励ましを心の糧に/進路を決めた母の一言/自転車/身代わりになってくれたミニ/もう一度お礼が言いたい/実りの秋の、一瞬の心遣い/ポプラはみんな生きている/袖触れ合うも団地の縁

 アートの世界にはばたく自閉症の長男[体験手記]/私のスーパーウーマン/言葉を越えた心の声/雪の日の情け/六年間の母娘/老夫婦/七色の声で/母が天使に見えたとき/人にやさしいドライバーに/小さなことからさりげなく/人の情けに涙/大好きなおばあちゃん/鈴木さんは救いの神/腹ペコの勇者/お父さん/途方に暮れて救われて/夕陽とポチと父ちゃんと/お姑さん、ありがとう/人も鳥も、地球の友達/言葉は生きている

 

 

本書は倫理研究所ホームページ内
倫理の本棚(オンラインストア)」で販売しています。

 

2015年、まなびピアは福島県にて開催されます。
倫理研究所も参加事業としてラジオ番組「明日への一歩」を提供し、
リスナーから寄せられた体験談やエピソードをご紹介する予定です。

「明日への一歩」は、
10月5日~11月13日の毎週(月)~(金)、
ラジオ福島の人気番組「かっとびワイド+」内で放送します。

近県にお住まいの方は、ぜひお聴きください。
また、投稿作品も募集しています。
詳細はラジオ福島のホームページをご覧ください。

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