倫理の本棚ブログ

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未知への旅-「日本」とのつながりを求めて

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丸山敏秋著
新世書房/定価¥1,100(税込)
B6判 257頁

 

本書は二人の若者が一人の尊敬できる人物との出会いを通じて、
日本の歴史や伝統文化の本質について再発見していく物語です。

主人公である三上晃は都内の私立大学に通う、
いわゆる普通の大学生。
二年生に進級するも、将来に夢を描けず鬱屈した日々を過ごしていました。

ある日、授業を休んで出かけた登山で足を挫いた晃は、
そこに偶然居合わせた鍼灸医の杉山雄一郎に応急処置を施されます。
そして、都内にある杉山先生の治療院で治療を受けた折に、
晃は先生からあることを提案されました。
それは、月に一度、先生と勉強会を開くということ。
会話するうちに先生の博識や人間性に惹かれはじめていた晃は快諾し、
晃の恋人の紗江子も加わり勉強会がスタートしました。

勉強会で繰り広げられる対話は多岐に亘りました。
近代における「知性」と「魂」の関係性や、
そこに起因する自然環境や「ふるさと」の喪失。
経済発展に伴い日本人が陥った心身の疲労と、
それを癒す場としての「ふるさと」の役割。
先の敗戦により日本人に植えつけられたトラウマやコンプレックス、
薄れゆく道徳心や高き精神性等々。
それは晃や紗江子にとって、初めてみつめる現代「日本」の姿でした。

 

目隠しをした人間はまっすぐに歩けず、同じ所をグルグル回ってしまう。しかしうっすらと先が見えるだけでも、まっすぐに進めるのだといつか聞いたことがある。杉山先生を知る前の自分は、分厚い目隠しをされていたようなものかもしれない。

将来に対してどう進んでいいのやら、まったくわからなかった。主体性も乏しく、漫然と生きてきたのだ。もちろん今でも将来の進路とか、見えてはいないのだが、たくましく進んでいける力が蓄えられつつあるのを感じる。

 

 

対話の内容はその後、自然と共存共栄し、高度な文明を築いた縄文時代や、
太陽エネルギーを活用し循環型の社会システムを構築した江戸時代へ及びます。
現代社会に大きな影響を及ぼしてきた日本文明の素晴らしさや、
なにより自然を畏敬し、親祖先との“つながり”を重要視してきた、
「日本」という国のルーツともいえる日本人の持つ高き精神性は、
知識だけでなく心の素養として二人に染み込んでいきました。

エピローグで杉山先生は二人にこう語りかけます。

 

日本はこれからまだ当分は厳しい状態から抜け出せないだろうけど、〈谷深ければ山もまた高し〉さ。きっとまたいつかはよくなる。君たちが、その素晴らしい次の時代を切り拓くんだ。〈魂〉のふるさとに帰る旅をしっかり続けていこう。日本人なのに知っているようで知らない日本と、しっかりつながる心の旅を続けていこう。

 

物質的な豊かさの中で暮らす私たちが見失っている大切なこととは何か。
「日本」という国はどこからきて、どこへ向かおうとしているのか。
未来を担う若者にこそ読んでほしいと願い、
著者は小説風の対話形式で本書を著しました。

あなたも晃と紗江子とともに、「未知への旅」へ出てみませんか。
未来を切り拓く勇気へとつながる、
未知の世界へ踏み込んでいく心の旅へ。

 

《目次より》

プロローグ 不思議な出会い
1魂の帰るところ
2疲れ果てている日本人
3トラウマを超えて
4奇跡の日本文明
5神々の国の調べ
6〈いのち〉への回帰
エピローグ きっとまたいつか

 

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