倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

世紀の歩調

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丸山竹秋著
新世書房/¥1,000(税込)
新書判 280頁

 

21世紀を7年後に控えた平成7(1995)年9月に、本書は刊行されました。
その年の1月には阪神淡路大震災、3月には地下鉄サリン事件
12月には福井県敦賀市高速増殖炉もんじゅ」で
ナトリウム漏洩事故が起きるなど、
国内においては世間を震撼させた事件が連続した1年でした。
一方、世界に目を転じてみれば、
地球温暖化、大気汚染、エネルギー問題、地域紛争や戦争など、
地球環境は悪化の一途を辿る時代にあって、
21世紀を調和の世紀とするために、
人はいかに処すべきか、それを説いたのが本書です。

 

人間と人間の不調和が原因となって地球の環境は崩されるのである。家庭や社会の問題、民族の対立、ひいては戦争も、一人ひとりが自分勝手な生活をすることを元にしている。これに対して、物だけではなく、人間自身を尊ぶことも軸にして考え、最重要視して、毎日の実践をしていきたい。実践は個々でも、地球人の目指すべき全体的目標に向かって、歩調をそろえ、足並みをそろえて進んでいかなければならない。それは、朗らかに楽しく進んで喜んで働き、仲良くする生活を毎日行なうことである。(中略)これを総括して「世紀の歩調」という。(「まえがき」より)

 

本書に貫かれているキーワードは「共尊」です。
人も、物も、自然も、すべては一つに繋がっていて、
どちらか片方が優れていて、片方が劣るという見方は、人間のエゴである、
と著者は説きます。
万物はみな等しく尊い、という考えに立ち、一人ひとりが歩みを進めるとき、
親子・夫婦間の家庭問題も、環境問題も、社会の問題も、
世界の紛争さえも、解決できると著者は訴えます。

 

人間は、本来わがままなものである。自分のよいようにしようとする性向を強く持っているものである。(中略)そうしたわがままを抑制し、自利、利他を営みつつ、真の幸福生活を建設しようとする本性もまた同時に持っているものである。

我々人類はすべからくこの「わがままの制御」を堅持し、自他を尊重し、大自然の調和を図り、万物共存共栄の実を挙げつつ、すべての物(人)を活用して、人類の大使命を実現するように努めたい。これが人間の倫理であり、地球に対する人間の倫理、つまり地球倫理の実践にほかならない。まず真っ先に、日本人みずからこの大目標に目覚めようではないか。(第7章「豊かさの中身」より)

 

刊行から20年を経た現代、温暖化は言うに及ばず、
市場経済、テロの脅威、紛争・戦争など、
私たちを取り巻く地球環境は一層深刻さを増しています。
大調和の世紀を創出し、
豊かで平和な家庭、社会、世界を築くために、
私たち一人ひとりにできることとは――。

本書を開いてみてください。
今日から取り組める身近な実践のヒントが詰まっています。

 

《目次より》

序 章 二十一世紀は調和の世紀
第一章 補い合いの妙趣
第二章 己を尊び人に及ぼす
第三章 心の砂漠化への歯止め
第四章 元は一つ
第五章 いのちを育む家庭
第六章 敬と愛の家庭学校
第七章 豊かさの中身
第八章 一人ひとりの地球倫理

 

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新世(2016年11月号)

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倫理研究所/¥200
A5判 112頁

「相手の話を“きく”」ときいて、
“聞く”と“聴く”どちらの漢字が浮かびますか?

“聞く”は、音や声を耳に感じ認めることであり、
“聴く”には、聞こえるものの内容を理解しようと、
「進んで耳を傾ける。傾聴する」という意味があります。

自分の気持ちを相手によく聴いてもらうと、楽になります。
逆に、相手の話をじっくり聴くと、理解がさらに深まり、
〈こういう見方や考え方もあるのか〉と、
学ぶ機会も生まれてきます。
夫婦、親子、兄弟、上司と部下など、
相手の話をよく“聴く”ことが、より良い関係を築き、
より深みのある人生に繋がっていくことでしょう。

11月号の特集は「聴く力を培おう」です。
どうしたら聴き上手になれるのか、
姿勢や心構えにも触れながら、
3名の体験レポートから探ります。

連載の「明日へのエール」では、
身内や自分自身に介護が必要になったとき、
どのような心持ちで向かえばよいのか、
実践のポイントやヒントをお伝えします。

「わくわく子育て親育ち」では、
家庭を明るく輝かせ、
子供の心を育む“言葉”について考えます。

今月号から「大切な人たちに伝えたい」を掲載。
今年、1都5県で開催した「青年フォーラム」(弁論大会)で発表された、
小学生たちの心温まる作文を紹介しています。
ぜひご一読ください。

 

《目次より》
巻頭言

・新世言「天皇陛下の御心に寄り添うとき」丸山敏秋(倫理研究所理事長)

巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」[80]-横山慶子(83)
              (横山慶子舞踊団・横山慶子舞踊学園主宰)
特 集
・聴く力を培おう

 ・レポート「娘の受験も何事も相談。夫の的確なアドバイス」
 ・レポート「母を介し、弟の苦渋の決断が聴こえたのです」
 ・レポート「相槌を打ちながら、身を乗り出す姿勢で」
 ・寄稿「聴き上手になるのは、人生の豊かさに繫がります」兵働弘一(臨床心理士

連 載
・小学生の作文[1]「大切な人たちに伝えたい」
・明日へのエール[23]「今日も、笑顔で奉仕。心境によって、境遇も変わる」

・活路は足もとにあり[8]「いざ、読書の秋に」丸山竹秋(倫理研究所会長)
・わくわく子育て親育ち[11]「子育てのキーワードは何ですか?」
・にっぽん名勝紀行[11]「神話の里・高千穂」山梨勝弘(風景写真家)
・摘んで、味わう野草帖[11]「アケビ」「サンジソウ」岡田恭子(料理研究家)
・世界・一期一会[11]「ブータンその2」三井昌志(写真家)
・昔むかしの物語[23]「旅人馬」すずき大和(絵本作家)

 

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純粋倫理と科学 倫理文化研究叢書1

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丸山敏秋著
倫理研究所/定価¥3,500
A5判上製 364頁

 

今日ほど、倫理への関心が高まっている時代はないのではないでしょうか。
倫理の荒廃を示す諸問題があらゆる分野で頻発し、
政治倫理にはじまり、
生命倫理、医の倫理、企業倫理、環境倫理、報道の倫理・・・等々、
まさに世の中に「倫理」が乱舞しています。

倫理が問われ、求められるものの、
そうした時代の期待に倫理学がしっかりと応えているのでしょうか。
また、国民の多くも、倫理を強く求めながら、
倫理の意味をしっかりと把握しているのでしょうか。

 

 そのような状況を鑑みて、筆者はここに「倫理文化学」という研究分野の構築を提案する。倫理文化学とはさしあたり「多様な文化の基盤に見出せる倫理を探究し、統合的に研究する学問」と表現しておこう。そこでは、全体性・綜合性・体系性を志向する哲学の一分野として研究されてきた倫理学の成果を踏まえつつ、応用倫理学が扱う現代のさまざまな社会問題をはじめ、日常卑近な生活の場面にまで至る広範な文化のフィールドにおいて、人間の生き方としての倫理を探究する。
(序論「倫理文化学の構想」より)

 

改めて言うまでもなく倫理とは、「人のふみ行うべき道、人間関係や秩序を保持する道徳、人倫の道」(『日本国語大辞典』)であり、
倫理を探究する学問が倫理学です。
しかしながら、多様化する文化や価値観に適合するには、
普遍的価値を有する「倫理」とその探究が不可欠であり、
また、「環境倫理」に代表されるように、
倫理の領域を「人と人との関係」からさらに拡げる必要性が高まっています。

本書のタイトルにある「純粋倫理」とは、
社会教育者であり、倫理研究所創立者である丸山敏雄が研究・提唱した、
福徳一致の「生活法則」としての倫理です。
自分も他者も共によりよく生きるために踏み行う「みち」であり、
いつ、どこで、誰が行なっても常に正しいといった普遍性が大きな特色です。

また、丸山竹秋(倫理研究所前理事長)が1985年に提唱した「地球倫理」は、
地球上の無生物から太陽や星などの天体にまで倫理の対象が拡げられています。

そうした「生活法則」としての倫理の裾野をさらに拡げ、
古今東西の倫理思想とその調査研究を視野に収めながら、
真に現実問題に寄与貢献する「新しい倫理学」を構築することが、
著者の構想する「倫理文化学」の眼目の一つです。

その実現へ向けて、
多様な研究成果を計画的に刊行する「倫理文化研究叢書」の初巻として本書は誕生しました。

倫理文化学の輪郭を示すとともに、
その一領域を担う、純粋倫理の学術的側面を明らかにすべく、
心理学や近代科学に照らした論考や、
科学と関連の深い丸山敏雄の思想に関する論考をまとめています。

 

 学問は細分化される傾向にあるが、「人のみち」を扱う倫理学は本来、細分化を拒むべきものではないだろうか。「倫理」をキーワードにした学問的な研究領域として、倫理現象の調査や倫理思想の研究を丹念に積み重ねながら、今という時代に生きる人間に生き方の指針を与える力を持った新しい倫理学を構築しようとする夢を、抱き続けたいと願う。
 夢は実現の導き手であるのか、実現しないから夢であるのか……。どちらであってもいい。夢は抱くことに意義がある。
 倫理文化学は、倫理学の壮大な夢でありたい。
(序論「倫理文化学の構想」より)

 

多様な文化の基盤をなし、時代・社会・民族の垣根を越えて、
あらゆる人々の生きる指針となりうる新しい倫理学を構築する。
本書はその序論であり、挑戦の書です。

 

《目次より》

序 論 倫理文化学の構想 
 第一節 倫理と文化と学問
 第二節 倫理文化学の内容と展望

第一部 倫理と実験 
 第一章 新しい倫理学への挑戦
 第二章 科学に立脚する倫理
 第三章 自然科学と実験『実験医学序説』をてがかりにして
 第四章 科学と因果律について
 第五章 実験倫理学と経験科学
 第六章 目的論と実験倫理
 第七章 実験倫理学の方法的吟味

第二部 物の科学と「一」なる次元
 第一章 「一」を探求する意義
 第二章 ニューサイエンスを回顧する
 第三章 隠れた内蔵秩序の発見― デイヴィッド・ボームのコスモロジー
 第四章 断片から全体へ― デイヴィッド・ボームのコスモロジー
 第五章 全体性を重んじる医療
 第六章 「一」なるフィールドへの接近
 第七章 万象の「原形」と二極分化― 三木成夫のコスモロジー

第三部 心の科学と「一」なる次元
 第一章 実験倫理学ユング心理学
 第二章 丸山敏雄と至高経験― マズロー心理学からの一考察
 第三章 トランスパーソナルな次元へ

 

本書は「倫理の本棚(オンラインストア)」にて取り扱っております。

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