倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

戦士の道と純粋倫理 倫理文化研究叢書2

f:id:rinribook:20161122093541j:plain

高橋 徹著
倫理研究所/¥3,500
A5判上製 366頁

 

著者は、アメリカの文化人類学者カルロス・カスタネダ(1925~1998)の著作に、
長年にわたって親しんできました。
カスタネダの著作の多くは、北米先住民の末裔にあたる、
ファン・マトゥスを中心にして展開されるルポタージュであり、
北米・南米のサブカルチャー研究に、少なからず影響を与えたといわれます。

本書は、著者がその原書と翻訳書を30年にわたり行き来しながら研究した、
ファン・マトゥスの思想及び
メキシコのシャーマンに受け継がれる知の体系である「戦士の道」と、
「純粋倫理」を比較検証しながら、
それぞれの本質に光を当てることを意図しています。

 

 もう少し総合的に、この二つの体系の共通性や相違について、整理してみることにした。

 この際の方法論は、次のようなものである。すなわち、前者の「戦士の道」の解説を試み、それをもとに純粋倫理を構成する内容や細目を照らし出す――それにより、純粋倫理に対する新しい見方や、その現代的な価値や意義を問い直すという方法だ。(中略)

 このようにして、戦士の道と純粋倫理の二つを対比させることによって、単独では見出せなかったそれぞれの本質を、素顔を、引き出すことが本書の目指すところである。(序章「本書の意図」より)

 

宇宙と人間の関係性、肉体とエネルギーの関係、
心の状態と肉体の関連性、苦しみに対するとらえ方、
性の神聖さと夫婦の一致など、
11項目に章立てして、戦士の道と純粋倫理の接点を探ります。

 

 われわれの小我は日常的な社会生活の中で育まれた「肉体と自分を同一視する自我」である。あるいは「肉体の中にいる小さな私」である。メキシコのシャーマニズムは、この小我という仮面をはずし、別な第二の仮面をつけることを目的とすると言う。では、第二の仮面とはどのようなものか? それは、大我―小我という図式をもとにして言えば、おそらく大我との関連で見出される「私」である。
 このようなメキシコのシャーマンたちの考え方は、敏雄の述べる「名代の倫理」に極めて近い。敏雄は、小我と大我をそれぞれ「内なる自分(内の私)」と「外の自分(外の私)」と呼び、次のように述べる。

 内なる自分は、もって生まれたどうすることも出来ぬ自分であって(中略)、きじ(生地)であるから、どうしようもない。(中略)こうした地質は取り替えがきかぬ。
 外の自分は、自由である。ひろい、やわらかい、たやすく変わる。(中略)

 こうした自由自在で、どうにでもなれる外の私が、うちの私と入れ代わる。なりたいもの、ありたいものに入れ代わる。これが「名代の倫理」の基礎である。
 新しい倫理の実践は、一にすなおの一本路を前進して、ことごとに内の小我をすて、己以外の偉大者につく道ゆきである。

(第十一章「外皮とツミの皮」より)

 

世界地図において、
日本を東の端とすれば、北米・南米大陸は西の端です。
数千年にわたり遠い異国で伝承されてきた知識や技術と、
70年にわたり日本で実践・実証されてきた生活法則との共通点とは何か。
現代人にも寄与する普遍性の根本はどこにあるのか。
倫理文化学の構築へ向けて、
新たな探究の入り口を示します。

 

《目次より》
序論 
第一章 宇宙は光の繊維に満ちている
第二章 「エネルギー」の観点から考える
第三章 「個人的な力」について
第四章 我慢と忍耐
第五章 苦しみに対するとらえ方
第六章 性の神聖さと夫婦の一致
第七章 完璧さと生活の緊張
第八章 二つの心と二つの体
第九章 反復と恩
第十章 「内部の対話」と「沈黙の知」
第十一章 外皮とツミの皮
あとがき

 

倫理の本棚(オンラインストア)」にてご購読いただけます。

おおきくなあれ りんりの育児③ 幼児編

f:id:rinribook:20161115114200j:plain

倫理研究所
新世書房/定価¥1,000(税込)
A5判 56頁

 

「りんりの育児」シリーズ第3弾は「幼児編」です。
少しずつ行動範囲も広がって、
活発に動き回って遊ぶ幼児期の子供たち。
怪我をしないか、服を汚さないかと、
見守るお母さんはハラハラドキドキ。

また、好き嫌いの意思表示をハッキリと示したり、
「あれは何?」「これは?」と、
身近な色んなものに関心を寄せはじめるのもこの時期の特徴です。
遊び、しつけ、人との関わりなどをどの様に教え、
子供の病気や失敗とどう向き合えばよいのか。

幼児期の子育てにおける親の心構えを、
色鮮やかなイラストを添えてお届けします。

 

お手本は親

「守ってもらいたいこと」が習慣になるように、
はじめは一緒に、手を貸しながら、
10回、20回、1ヵ月、2ヵ月……と
長い目とおおきな気持ちで、
こどもがわかるように繰り返し教えましょう。
こどもは、親をお手本にしています。
「例外」や「特別」はなるべくつくらないように、
一貫した態度でのぞみましょう。
きぜんとした態度も時には必要です。
たとえば、歯みがき。
昨日はしたけれど、今日はしない、というのは、
理由はどうであれ、好ましいことではありません。
両親の決めたことが、動いたり変わったりすると、
こどもは混乱するばかりで、何も身につきません。
こどもは、お母さんの一貫した姿勢、態度に納得し、
安心するものです。
そして、「こういうことをするのは、いけないことなんだ」
という善悪の判断ができるようになり、
道徳心や、すなおな心が育っていきます。

幼児の7つの手はじめ

1.早寝・早起きの生活リズムをつくりましょう。
2.清潔を心がけた生活習慣を身につけましょう。
3.食事は楽しく、できるだけ家族そろっていただきましょう。
4.ほがらかに、元気な声でお返事を。
5.遊び終わったら、きちんとお片付け。
6.家族そろってあいさつの習慣を(おはよう・おやすみなど)。
7.トイレトレーニングは、ゆっくりゆっくり。
  おねしょ・おもらしは、気にしない、あせらない、
  他の子と比べない。

これらの習慣を、こどもの発達段階に合わせて、
あせらず、ゆっくり、根気よく養っていきましょう。
幼児期に身についた宝はなくなることはありません。
忘れているようでも、いざという時にかならず表われ、
わが身を助けます。
美しい習慣はこどもへの最大の贈りものです。

 

子育ては、いつの時代でも重要なテーマです。
子を持つ親のだれもが、
子供と過ごす楽しさや喜びを味わう反面、
悩んだり不安になったり、といった経験があるのではないでしょうか。

本書は、倫理研究所創立者・丸山敏雄の育児法を、
現代の若い両親に理解していただき、
活用されることを願ってアレンジし、まとめたものです。
お父さんお母さんの心の支えとなれば何よりです。

 

《目次より》

遊び
・ふれあう

・汚しても
・こども同士のトラブル

家族のつながり
・夫婦仲良く

・祖父母の存在
・弟・妹の誕生
・ゆたかな人間関係を

しつけ 急がず、あせらず、根気よく
・ゆっくり、ゆっくり

・お手本は親
・家族で楽しい食卓を
・こどもの「なぜ?」「どうして?」
・心を受けとめて
・幼児の7つの手はじめ

こどもの病気
・今、これからを見つめる

子育てに苦しさを抱えていたら…
・苦しさの根っこは…

・心をひらく
・失敗の向こうに光が

 

倫理研究所ホームページ内、

倫理の本棚(オンラインストア)」でご購読いただけます。

清き耳

f:id:rinribook:20161109140639j:plain

丸山敏雄著
新世書房/¥1,100(税込)
B6判 296頁

 

良いことをすれば幸福になる、
「徳福一致」の生活法則を発見・唱導した丸山敏雄は、
多数の研究論文を執筆しましたが、
一方で、日常生活で誰もが経験する、
身近な題材をテーマとした随想も多く書き残しました。
その中から、日常の暮らしに直結した24篇を厳選し、
一冊にまとめたのが本書です。

たとえば、本書のタイトルの一文字にもなっている「耳」については、
こう記しています。

 

 聞かねば耳ではない。まともに、ありのままに、淡々として私情私意、我情我欲を挿し挟まずに、たださながらに聞く、これがほんとの耳である。
 聞こえても、そのままの意味に取らなかったり、反対にとったり、裏を考えたり、ねじけたり、ひねったりする人の耳は、その耳の穴がゆがんでいるのであろう。ゆがんでいるから言葉がねじけて入って来る。通りが悪い、途中にひっかかる、外情が内達せぬのである。(中略)
「清き耳」――これは子供の耳である。(「耳」より)

 

家庭での振る舞いは言うに及ばず、
人との接し方、生き方など、人の営みの実例を挙げて、
具体的に分かり易く、時に優しく、時に厳しく語りかける著者。
とりわけ、生活の根幹をなす「職業」については、こんな厳しい言葉も並びます。

 

 人生の推進力は働きであり、それが方向を決定したものが職業である。(中略)どのような心がけで務めているかによって、その人の生きる誠意が定まる。職業が、正しい方向をとり、誠意で進んでいるとき、人がほんとうに生きておるのである。これを「天職に生きる」という。(中略)

 目の前のことを、なまけ、きらい、いやがる人には、職業は与えられぬ。己の職業に身命を打ちこむことのできぬ浮気ものは、ただ今日一日、この仕事に、汗を流そう。喜んで進んで力を傾けよう。(中略)はたらきは、己を捨ててその天職につくすところに、成就、結実する。この道行きが人生で、この果てが、至楽至尊の境である。(「職業は人を苦しめるか」より)

 

さらに、「悩み」や「不幸」については次のように説いています。

 

すべてのなやみは己を守ることにより起こる。己を立てることにより起こる。我がままがもとである。(「生きることは悩みであるか」より)

すべての不幸は、わがまま勝手からくる。「わがままを捨てる」。これが、ただ一つの正しい生活であり、他には無い幸福になるみちである。(「捨てる生活」より)

 

家族がぎくしゃくしたとき、
職場の人間関係に悩んだとき、
人生に行き詰まりを感じたとき、本書を開いてみてください。
著者が示す、より良く生きていくための心の持ち方と暮らし方のヒントは、
私たちに大きな示唆を与えてくれます。

 

《目次より》
猫と合理迷信

家庭と動物
帯と鉢巻
早起き
朝のしごと
あいさつ
食事文化
時間
出足と引き足
コロンブスの卵

猿ぢえ
予言者
無眼坊夜話
生命はわがものか
職業は人を苦しめるか
生きることは悩みであるか
うなぎと遺言
真実は何処に
捨てる生活
損得なし
祖孫一身
恵蘇の宿
封建性はこのように生きている

 

倫理研究所ホームページ内
倫理の本棚(オンラインストア)」で販売しています。

一般社団法人倫理研究所|倫理の本棚 無断複製・転載を禁じます。