家庭をよくする-心の沙漠化を防ぐために
丸山敏秋著
新世書房/定価¥500(税込)
B6判 168頁
日本の家族は、親子三代が同居することが当たり前だった時代から、
夫婦とその子供だけの小さな家族、
いわゆる核家族の時代へと変わってきました。
「核」という言葉には「中心」という意味がありますが、
現代の家族には中心があるのでしょうか。
中心があれば、おのずとそこに家族の結びつきが生まれます。たとえばかつての父親は、一家の大黒柱として、中心の役割を演じていました。家事を切り盛りする母親は、父親とは違う隠れた中心の役割を果たしていました。あるいは、仏壇のような先祖を祀る場所も、家族の中心といえるでしょう。〔中略〕
ところが今や家族は、個人の集まりのようになってしまいました。ミーイズムという自分中心主義が社会に蔓延してきて、それぞれが自分を中心に生活しているので、バラバラなのです。(第一章「三 変わりゆく日本の家庭」より)
核を失った家庭では家族の絆やつながりが薄まり、
「(父親・母親・子供)らしさ」といった特長が失われ、
「安らぎの場」としての機能を果たせなくなります。
さらにそうした家庭では、他者への思いやりや愛情が希薄化し、
「心の沙漠化」といった状況に陥ってしまいます。
家庭の大きな役割の一つが子供の教育です。
本書では、様々な問題を抱える現代日本の家庭・家族を概観しつつ、
子育てや家庭教育という最重要のテーマに強い光を当てて、
家庭の本質を問い直します。
そして、日本の家庭にも確実に広がってきている「心の沙漠化」を食い止め、
家庭をよりよくしていくための5つの提言をお伝えします。
提言の一つが「親が『手本』を示そう」です。
親が子供に示すべき、いちばん大切な手本とは何でしょうか。言うまでもなく、それは夫婦が仲良くしていることです。
わが子の前ではとりつくろって仲よくしていても、子供にはお見通し。隠していても子供は両親の様子を敏感に感じ取ってしまいます。そしてよき「かすがい」になるべく、賢明につとめてくれるものです。〔中略〕ところが夫婦の和合はなかなか難しいものです。新婚当初はよくても、しだいにピッタリ合わなくなってきます。合わなくなった関係の改善は大変ですが、合わせるための秘訣もあるのです。
それは、自分が先に変わること。相手を変えようとするのではなく、自分を先に正すこと。物を操作するように、相手だけを変えようと操作する態度は大きな誤りです。自分が変わるというゴールデンルールだけでもしっかり押さえておけば、家庭がどれほど安らぎの方向に好転するでしょうか。(第二章「一 親が「手本」を示そう」より)
家庭の基本であり、家族の中心であり、
子の模範となる夫婦が5つの提言を真摯に実行するとき、
夫婦の愛和に根ざした安らぎのある家庭への扉が開かれます。
「これはわが家に欠けているな」と気づいた事柄があれば、
ぜひ取り組んでみてください。
また本書の巻末では、
「家庭をよくし、地域をよくし、日本をよくする」を目的に、
様々な活動を通して家庭倫理を全国で推進している、
「家庭倫理の会」のあらましと活動の意義について紹介しています。
同会を理解するうえでの手引きとして、
家庭倫理を学習する上での導入本として、
おすすめしたい一冊です。
《目次より》
序章 広がる心の沙漠化
第一章 家庭をしっかり見直そう
一 日本に広がる心の沙漠化
二 「家庭」という言葉に込められているもの
三 変わりゆく日本の家庭
四 複雑系としての家族
五 教育の本質と原則を確認しよう
六 家庭の力を呼び戻そう
第二章 家庭をよくする五つの提言
一 親が「手本」を示そう
二 「捨て育て」を実行しよう
三 家の中の「きめごと」をつくろう
四 祖先とのつながりを深めよう
五 基本的信頼をはぐくもう
付録 社団法人倫理研究所と「家庭倫理の会」
※本書は現在販売しておりません。(2016.10.17記)