新世(2017年2月号)
倫理研究所/¥200
A5判 112頁
2月号の特集は「もとにつながる」をテーマにしました。
江戸時代、米沢藩主の上杉鷹山は、
「父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い」と伝え、
顕著な孝行者には褒美を与えていたそうです。
父と母は、この世に自分を産み出してくれた生命の根本(もと)です。
本特集では、嫁ぎ先の両親、自身の両親、
あるいは事業の創業者に“つながる”ことで、
家庭が安定し、事業が繁栄した、3名のレポートを紹介します。
根本につながるとは、自分を生み育ててくれた両親を始め、これまでに受けてきた沢山の恩を自覚するということです。
人生という航路は、常に順風満帆とは限りません。家庭生活や仕事、あるいは企業経営を進めるにあたって、荒波に襲われてなかなか立ち直れなかったりするケースもあるでしょう。一つの物事を一貫して続けるのが成功の秘訣だと認識していながら「なかなか持続できません」と話す人もいます。
何故かといえば、それは根本を忘れてしまっているからではないでしょうか。ここ(土台)をきちんと固めておかないと、あと一歩というところまでこぎつけながら、最後で崩れてしまうケースが少なくありません。(中略)
何かしらの壁にぶつかったとき、〈親を始め、沢山の人が応援してくれているんだ〉と受けてきた恩を思い起こし、初心に立ち返るとき、気が引き締まり、新たな展開が開けてくるのです。(「まとめ」より)
「まとめ」では、恩意識を深めることの意義に加えて、
恩を深めるための具体的な実践のポイントを分かりやすく解説しています。
連載の「新世言」では、
先に行なわれたアメリカ大統領選での一幕を例に挙げながら、
今日求められる強い国家とは何かについて考えるとともに、
激変の時代を生きる国民の課題として、
自立と奉仕の精神の涵養について提言しています。
先月号から「実践の軌跡」と名称を変えた「体験記」では、
“責め心”を捨てる実践により生まれた親子の絆や、
夫婦愛和の実践の妙味や醍醐味について、
解説を添えてお伝えします。ご一読ください。
《目次より》
巻頭言
・新世言「自分にできることは何か」丸山敏秋(倫理研究所理事長)
巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」(83)-上原勇七(印傳屋)
特 集
・もとにつながる
・レポート「亡きお姑さん、あなたの娘で幸せでした」
・レポート「両親の後ろ姿に学び、地域に喜ばれる店作りを」
・レポート「創業者の父と共に築く、地域に根ざした医院」
・まとめ「連綿と受け継がれ、支えられてきたわが命」
連載
・美しきあきつしま2「伊勢の入り口 斎王の都 三重県三和町」
・古典を旅する 日本の源流を尋ねて2「万葉集 旅の歌人」安田 登(能楽師)
・大地に生きる2「森の哲学者 フクロウ」宮崎 学(写真家)
・世界の家族ごはん2「イタリア編」
・和食のある食卓2「春一番の幸せ」藤井まり(精進料理研究家)
・実践の軌跡
「『ありがとう』は父との心の架け橋」増田勇二(家庭倫理の会延岡市)
「妻との心の一致で羽ばたいたケーキ店」竹村 茂(広島県倫理法人会)
・明日へのエール26「『まごころ』実践した方々へ。富士の麓から、大返信」
・グローバル時代の倫理運動4「台湾・中華民國倫理研究学会2」
・わくわく子育て親育ち13「人と人とのつながりが、子供の心を涵養します」
定期購読及びバックナンバーも購読できます。
倫理研究所ホームページ内
「倫理の本棚(オンラインストア)」よりお申込みください。
生きる道
丸山竹秋著
PHP研究所/¥952(税別)
A5判 255頁
45年にわたって倫理研究所の理事長を務めた著者は、
雑誌『倫理』に621本、『新世』に600本を寄稿したほか、
26冊の単行本を上梓するなど、膨大な量の原稿を書き遺しました。
それらの中から、「運命をひらく生き方」のエッセンスを抜粋し、
一冊にまとめたのが本書です。
本文は9章112編からなり、見開きで1編完結の短編集です。
人は、相手を責めるよりも前に、自分自身を改革せよ。かくすることによって、自らの人間性は高まり清められ、相手もそこを認めざるをえなくなる。
人を許さない者は、おのれ自身も人から許されない。そして苦しむだけである。人を牙でかめば、また自分も牙をもってかまれるのだ。
許すことは、妥協することではない。(中略)相手の人の魂を、同じ人間として認め、受け入れることなのである。
自分には厳しくとも、他人は許すがよい。自分の過ちには厳しく反省しても、他人の過ちには寛容であるべきだ。
(「人の世を生きる知恵」より)
人生いつでも順風満帆でありたいものですが、
「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」の繰り返しが人の世の常とも言えるでしょう。
もし、苦難に遭遇したとき、心の備えができていれば、
うろたえることなく受け止めて、
人生を切り拓くことができる、と著書は説きます。
それでも、どうにもならないときの心もちについて、こう記します。
どうにもならないものは、進んで喜んで受け入れるほかはない。
貧乏な家に生まれたことを悔やむよりも、むしろ「これがいいのだ」と、大いに張りきることだ。そして毎日毎日、気持ちを新しくもち、きょうも生まれ直して働くぞと、仕事に取り組んでいくことだ。そこに自分自身の開闢がある。開闢とは天地の開け初めのことだ。(中略)
自ら開発に転じて「さあ行こう」と積極的に打ちだしていくのが、人間の日々の開闢なのである。これは人間の変わり得る面であり、やればやれる部分なのである。(「逆境をはね返す」より)
人生は繰り返しの相にある。輪が巡るように、いつもまわっている。
繁栄と衰亡は、個人、団体、国家などにおいても、繰り返しているではないか。幸福や苦難もそうだ。幸福だといって、いい気になっていると、たちまち苦難がやってくる。苦難のただ中にほうりこまれているときでも勇んで喜んで働いていると、すぐに幸福が訪れる。
(「生命を育むもの」より)
日々の生活の心構えは言うに及ばず、
家庭、仕事への向き合い方や、
日本人としての誇り、死生観についても触れ、
豊富な例話をもとにピンチをチャンスに変える「生き方のツボ」が全編にぎっしりと詰まっています。
その一言ひと言が心に響き、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
物事に行き詰ったとき、
トラブルに見舞われたとき、
大きな障壁に進路を塞がれたとき、
本書を手にしてみてください。
活路が開け、そっと背中を押してくれます。
《目次より》
己を磨く
人の世を生きる知恵
日々の生活を大切に
道をひらく生き方
逆境をはね返す
日本人としての誇り
家族の絆
生命育むもの
本書は倫理研究所ホームページ内、
「倫理の本棚(オンライン)」よりご購読いただけます。
母性とたましい 倫理文化研究叢書3
丸山敏秋
倫理研究所/¥3,000
A5判上製 362頁
倫理文化学の樹立をめざし、
多様なアプローチによる研究の成果を発表する倫理文化研究叢書。
今回取り上げるテーマは「母性」と「たましい」です。
近年の日本において壊れかけ、
消失しかけているものの典型が家族における「母性」であり、
人間そのものにおいては「たましい」であり、
その回復が急務であるという著者の想いが込められています。
自分主義は、家庭にまで深く侵入した。「個食」や「孤食」という言葉が表すように、家族がバラバラになり、健全な家族関係を蝕んでいる。時代の変化と共に、家族のあり方も変容を余儀なくされるが、それが破壊への道のりであるとしたら、何としてもくい止めなければならない。すでに何年も前から、危険を知らせる警報が大音量で鳴り響いている。離婚の増加、幼児虐待、不登校や引きこもり、家庭内暴力……。一見平穏そうな家庭でも、家族の絆は薄れ、問題解決能力が失われつつある。
あたかも意図的に消されたかのように、母と子の絆を積極的に論じるような書物は書店に少なくなった。代わりに「母性が大切だというのは神話にすぎない」といった母性否定の論調の本や論文が目につく。いわゆるフェミニズム系統の本である。
自分主義の風潮に乗じて、社会解体をもくろむフェミニズムの猖獗ぶりは目に余るものがある。それが一過性のブームに止まらず、家庭をはじめ種々の領域に浸透していることが、現代日本の危機を後押ししているのは明らかといえよう。
そうした危機意識に立って、ヒトを人としてはぐくむ母性、および人間関係の原点である親子の絆を再考してみたいと企図した。(第一部「序言」より)
著者が考察の際に常に顧慮しているのは「純粋倫理」と呼ばれる生活法則です。
その提唱者である丸山敏雄(1892~1951)は、
『無痛安産の書』『育児の書』『学童愛育の書』をはじめ、
家庭教育や性の倫理に関する諸論文を著し、
「親子相関の原理」を世に問うなど、
親子の絆や母性を考察する上で拠り所となる数多の成果を残しています。
第一部ではそれらを傍らに置きながら、
現代日本のさまざまな家庭問題をみつめます。
そして、純粋倫理の実践事例に照らしながら、
母性や親子の絆とその重要性について論考しています。
第二部は、「たましい」をめぐる考察です。
世界中に行き渡った科学技術を軸とする近代文明は、
家庭や母子の中に限らず、
多方面で「分断化」ないし「孤立化」という現象を招きました。
その顕著なものに「たましい」があると著者は言います。
物質次元を対象として発達した近代科学においては、計量が困難な精神の領域は、扱い難いために長く研究対象から排除されてきた。(中略)
自然科学は対象を計量できる物質に限定することで飛躍的な発展を遂げたのであるが、それは同時に唯物論という一元的な認識を一般化することに繋がった。唯物論はおのずと虚無主義を招来する。人間は死ねば肉体は元素に戻り、他に何も残らないとなると、〈人生は虚しくはかない〉と考え、〈生きている時がすべてだ〉〈生きているうちに精一杯楽しもう〉とする享楽的な生き方が無意識のうちにも主流となる。
唯物論が氾濫する中で、果たして人間の精神は安定を保てるのかどうか。(第二部「『たましい』を考察する意義」より)
亡き人は無き人なのか――。
本書では「たましいはどう考えられてきたか」を示す文献を渉猟しながら、
唯物論の問題点を踏まえて、
現代人が見失いかけている「たましい」を問うことの意義について、
さまざまな角度から考察しています。
《目次より》
緒言
第一部 母子の絆と生命
序言
第一章 母子一気の始まり
第二章 胎児の能力と出産の問題
第三章 母子の絆とその破綻
第四章 男女の性差と母性本能―母性の特質と機能①
第五章 マトリックスと基本的信頼―母性の特質と機能②
第六章 親に対する子供の複雑な心理―母性の特質と機能③
第七章 感情の抑圧と「闇教育」―アリス・ミラーによる警鐘①
第八章 負の世代間連鎖は断てるか―アリス・ミラーによる警鐘②
第九章 「捨て育て」再考―丸山敏雄の育児論
第十章 テレビの害から身を守る
第十一章 胎児に尊厳はあるのか―人工妊娠中絶をめぐる問題①
第十二章 丸山敏雄の産児制限批判―人工妊娠中絶をめぐる問題②
第十三章 性と生命の尊厳を伝える―人工妊娠中絶をめぐる問題③
第二部 「たましい」をめぐる考察
序言
第一章 「たましい」を考察する意義
第二章 「たましい」の確信―小林秀雄の場合
第三章 「たましい」が在るかどうかを問うこと
第四章 子供の「たましい」
第五章 胎児記憶と「たましい」
第六章 平田篤胤が探求した死者の世界
第七章 平田篤胤が記録した生まれ変わり
第八章 死後世界とエルの物語
第九章 臨床体験が意味するもの
第十章 死と向き合って得られたもの―エリザベス・キューブラー・ロスの挑戦①
第十一章 臨死と死の意味―エリザベス・キューブラー・ロスの挑戦②
第十二章 生きることの意義―エリザベス・キューブラー・ロスの挑戦③
「倫理の本棚(オンラインストア)」にてご購読いただけます。