倫理の本棚ブログ

倫理研究所の出版物をご紹介します。

希望の倫理 朝の来ない夜はない-やさしい倫理シリーズ⑨

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倫理研究所
新世書房/定価¥900(税込)
新書判 234頁

 

人生には順境もあれば逆境もあります。
突然、思いもよらない事態に突き落とされることもあります。
たとえそれが他人に因るところであっても、
そこから脱出するのは自分自身であり、
そこからさらに向上するのも自分自身です。
そして、その脱出や向上の原動力となるものは、
“希望”ではないでしょうか。

純粋倫理を創唱した丸山敏雄(1892~1951)はこう述べています。

 

「うまく行かぬから、望みを失うのではない。望みをなくするから、崩れて行くのである」

「悲観は、雲である。憂いは、霧である。さわやかな希望の薫風で吹きはらおう。燈火をあかるくしよう、そして高く掲げよう。燈を太くしただけ、高くかかげただけ、必ず前途は打ち開ける」(まえがきより)

 

本書では、個人、家庭、社会、そして地球環境の4つの分野にわたって、
「希望の倫理」を詳述します。
それは、身に降りかかる“危機”をどう受け止め、
いかにしてそれを脱して、再生をはかり、
向上していくのかという実践のありようにほかなりません。

以下は、突然自分をおそった「いじめ」に悩みながらも、
たった一人で5年の歳月をかけて乗り越えた少女の例です。

 

 ある日、「おはよう」と元気よく教室に入っていった小学校四年のS子さんに、誰も返事をしない。追い討ちをかけるように、蔭での悪口が始まった。

 いじめは次第にエスカレートしていった。上履きがなくなる、机の中のものがなくなる、そしてそれがさらに暴力へと変わっていった。

 〈自由になりたい。もうこれ以上いじめないで〉

 声にこそ出さなかったものの、心の奥底で毎日泣き叫んでいた。次第に無口になり、自分ひとりの殻に閉じこもるようになった。(第一章「かけがえのない私」より)

 

いじめる側への恨み、憎しみがつのるばかりで、
人間不信に陥り、ついには自殺も考えはじめたS子さんでしたが、
五年生になったある日、
当時倫理研究所が催していた「少年日曜朝のつどい」に参加します。
同じような年齢の子供たちに囲まれ、
久しぶりに誰からもいじめられることなく、
心から笑い、楽しく過ごしたS子さんは、
それまでの自分の消極さが無性にいやになってきました。

 

 〈よーし、今まで何をされてもじっと我慢していたけれど、これからはすべてに積極的に行動していこう〉

 まずつどいの中で子どもたちの世話を始め、リーダーの言うことを素直に聞き、進んで実践をした。その成果が徐々に現われ、両親にもきちんと挨拶ができるようになった。

 中学生になってもいじめは続いていた。しかしS子さんの心には「もうみじめな生活はイヤ」という強い意志が芽生えており、なんとか現状を打開しようと必死の思いでいた。友達には「おはよう」「ありがとう」「ごめんね」というように、はっきり口に出してコミュニケーションをとるよう努めた。たとえ返事が返ってこなくてもとにかく続けたのだ。

 一ヵ月二ヵ月と過ぎ、中学二年もあと少しで終わろうという頃、「おはよう」と返してくれる友達が出てきたのである。通り過ぎるその後姿を見ながら、ジワーッとうれしさがこみあげてきた。その数は次第に増えていき、「あなたを誤解していたわ」と言って、積極的に話しかけてくれる友人も多くなった。もちろん彼女からも積極的に話しかけたことは言うまでもない。(第一章「かけがえのない私」より)

 

絶望的な状況にあって、
ただ心を閉ざして嘆いているだけでは状況は変化しません。
少しでも切り開こうと意を決する。
思うようにいかない境遇であればあるほど勇気百倍でぶつかる。
そんな目の前の一歩を踏み出そうとするところに大きな志が生まれることを、
S子さんをはじめ、本書に収められた体験の数々が教えてくれます。

 

 心に希望を燃やす、それは、それぞれの明日への挑戦なのだ。明日が来ることを信じて疑わず、目の前の一歩に喜んで進んで全力を注ぐ命の燃焼と言い替えてもいいだろう。

 改めて言おう。夜が明けたから、日が出るのではない。日が出たから夜が明けて、天地が明るく、万物が生き生きと活動を始めるのだ。日とは己の心だ。太陽のように赤々と燃える心である。その心に照らし出されて周りの物すべてが燦々と輝き出すのである。(「あとがき」より)

 

《目次》

序章 希望を胸に前進を

第一章 かけがえのない私
劣等感を味方にする/ハンデキャップは本当にハンデか/夢がパワーの泉になる/目の前の一歩を踏み出す

第二章 灯をともすのは自分
「今」の一所懸命は未来への財産/一人ひとりが燃えたときに

第三章 病と共に生きる
病は何を意味するのか/生命あるところ希望あり

第四章 家庭に新風を吹き込もう
家庭を明るくできますか/積極行動で家庭が変わる/家庭って何だろう

第五章 コンベア社会に体当たり
自律する勇気が「今」を打ち破る/便利社会の見失ったもの/管理社会からの脱出

第六章 命のバトンランナーとして
自然破壊と現代人/「地球共生体」の一員として/相互理解から始まる/地球時代がやってきた

終章 はじめに情熱あり
ガン制圧に取り組む人々/燃やせ、希望という太陽を

 

倫理研究所ホームページ
倫理の本棚(オンラインストア)」で販売しています。

悲嘆からの贈りもの―最愛の肉親の死を乗り越えて

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倫理版グリーフワーク研究チーム編著
新世書房/定価¥700(税込)
B6判 144頁

 

 「人間は生まれたときから死に向かって歩き、そして死は人の定め」であります。理屈ではわかっていても、その死が最愛の肉親のものであれば、遺された家族は事実をきちんと受け止められないまま、ただ悲しくて、淋しくて、苦しい思いをどこへぶつけていいかもわからずさまよい、果ては自分を責め、その後の人生を狂わせてしまうこともあるでしょう。
 死を見つめるという行為は突き詰めると、いかに生きるかを学ぶことであります。(「はじめに」より)

 

肉親との決別は、誰もが経験する通り道です。
しかし、遺族がその死を受け止め、悲嘆を癒し、
心の整理を終えるまでには相応の時間を要します。

そのような遺族の社会復帰(心の再建)を図る一連の営みを、
一般的には「グリーフワーク(悲観の癒し、悲哀の仕事など)」と呼びます。
本書を著した「倫理版グリーフワーク研究チーム」は、
文献調査研究および遺族への聴き取り調査研究によって、
純粋倫理における悲嘆を癒す特徴的な取り組みを抽出しました。
一般的なグリーフワークプログラムの役割は、
「遺族が悲嘆を癒し、新たな生きがいを発見するまでの伴走者」
であるのに対し、
同研究チームのめざすグリーフワークはそれらに加えて、
「故人との関わりを積極的に持ち、さらに絆を深めるとともに、肉親の死を契機として遺された家族の成長を促す」ことを視野に含みます。


本書の第一章では、
倫理版グリーフワークの方途とその効果・作用について詳述しています。

第二章では、最愛の肉親を亡くされた方々が、
その深い悲しみをいかにして受け止め、悲しみを癒し、
前向きに生きるに至ったかについて、
20件以上の聴き取り調査の中から5例を紹介しています。

そこには、悲嘆に暮れる日々の中から、
純粋倫理の学習と実践により亡き人の存在を身近に感じ、
〈(亡くなった肉親は)なお、私たちを支えてくれている。本当に幸せだ〉と、
肉体はなくとも人の「いのち」の永遠を確信し、
さらに、〈今までより(精神的に)一段上の生活ができるようになった〉と、
自らの生へのエネルギーを強くするに至った成長の過程が刻まれています。


本書を通して、自分を責め続けて来られた遺族の方々が悲嘆を癒し、
人生における再出発の第一歩を踏み出すきっかけとなることを願います。

 

《目次より》

はじめに
 「倫理版グリーフワーク」の確立へ向けた研究の経緯
 純粋倫理における死生観
 一般的なグリーフワークとは

第一章 悲しみを癒す倫理的方法とその効果
 
一、悲しみを癒す倫理的方法

 二、倫理版グリーフワークの方途とその作用
  【一】「故人への語りかけ」の実践
  【二】「故人の遺志を引き継ぐ喜びの働き」
  【三】御霊に対する積極的な「感謝」の実践
 三、「ありがとう」は死別の準備教育的実践

第二章 体験に学ぶ
 「ある朝、十四歳の娘が逝きました」
 「突然の交通事故で息子を喪って」
 「働き盛りの夫は七人の子を遺して逝きました」
 「二十二歳の娘が突然、交通事故で」
 「高一の次男が急性心不全で」

終章
 簡単には解明できない死の問題
 一般的なグリーフワーク完了の基準
 肉親の死は、己の人生再構築のはじまり

 

本書は倫理研究所ホームページ内、

倫理の本棚(オンラインストア)」よりご購読いただけます。

新世(2017年2月号)

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倫理研究所/¥200
A5判 112頁

 

2月号の特集は「もとにつながる」をテーマにしました。
江戸時代、米沢藩主の上杉鷹山は、
「父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い」と伝え、
顕著な孝行者には褒美を与えていたそうです。
父と母は、この世に自分を産み出してくれた生命の根本(もと)です。
本特集では、嫁ぎ先の両親、自身の両親、
あるいは事業の創業者に“つながる”ことで、
家庭が安定し、事業が繁栄した、3名のレポートを紹介します。

 

 根本につながるとは、自分を生み育ててくれた両親を始め、これまでに受けてきた沢山の恩を自覚するということです。

 人生という航路は、常に順風満帆とは限りません。家庭生活や仕事、あるいは企業経営を進めるにあたって、荒波に襲われてなかなか立ち直れなかったりするケースもあるでしょう。一つの物事を一貫して続けるのが成功の秘訣だと認識していながら「なかなか持続できません」と話す人もいます。

 何故かといえば、それは根本を忘れてしまっているからではないでしょうか。ここ(土台)をきちんと固めておかないと、あと一歩というところまでこぎつけながら、最後で崩れてしまうケースが少なくありません。(中略)

 何かしらの壁にぶつかったとき、〈親を始め、沢山の人が応援してくれているんだ〉と受けてきた恩を思い起こし、初心に立ち返るとき、気が引き締まり、新たな展開が開けてくるのです。(「まとめ」より)

 

「まとめ」では、恩意識を深めることの意義に加えて、
恩を深めるための具体的な実践のポイントを分かりやすく解説しています。

連載の「新世言」では、
先に行なわれたアメリカ大統領選での一幕を例に挙げながら、
今日求められる強い国家とは何かについて考えるとともに、
激変の時代を生きる国民の課題として、
自立と奉仕の精神の涵養について提言しています。

先月号から「実践の軌跡」と名称を変えた「体験記」では、
“責め心”を捨てる実践により生まれた親子の絆や、
夫婦愛和の実践の妙味や醍醐味について、
解説を添えてお伝えします。ご一読ください。

 

《目次より》

巻頭言
・新世言「自分にできることは何か」丸山敏秋(倫理研究所理事長)

巻頭連載
・歩み続けるひとびと「気と骨」(83)-上原勇七(印傳屋)

特 集
・もとにつながる

  ・レポート「亡きお姑さん、あなたの娘で幸せでした」
  ・レポート「両親の後ろ姿に学び、地域に喜ばれる店作りを」
  ・レポート「創業者の父と共に築く、地域に根ざした医院」
  ・まとめ「連綿と受け継がれ、支えられてきたわが命」

連載
・美しきあきつしま2「伊勢の入り口 斎王の都 三重県三和町

・古典を旅する 日本の源流を尋ねて2「万葉集 旅の歌人」安田 登(能楽師)
・大地に生きる2「森の哲学者 フクロウ」宮崎 学(写真家)
・世界の家族ごはん2「イタリア編」
・和食のある食卓2「春一番の幸せ」藤井まり(精進料理研究家)
・実践の軌跡

「『ありがとう』は父との心の架け橋」増田勇二(家庭倫理の会延岡市)
「妻との心の一致で羽ばたいたケーキ店」竹村 茂(広島県倫理法人会)
・明日へのエール26「『まごころ』実践した方々へ。富士の麓から、大返信」
・グローバル時代の倫理運動4「台湾・中華民國倫理研究学会2」
・わくわく子育て親育ち13「人と人とのつながりが、子供の心を涵養します」

 

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